2021.07.02
法人資産の運用を考える(33) もしも、小職が法人内部の運用責任者だったら(1) イントロダクション それは、組織として持続可能な資産運用か、否か?
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
さて今回から数回に分けて、
「もしも、小職が法人内部の運用責任者だったら」
という視点で考察してみたい。
まず、公益法人(財団法人、学校法人、その他非営利法人)は原則として、
営利目的の事業部門を持たない。
この点は民間の営利企業と決定的に異なる。
であるから、公益事業を超長期間にわたって維持・発展させていこうと思えば、
未来永劫に連続してゆく経常的な公益事業支出を、営利事業以外の財源から、
ファイナンスしないといけない宿命を負う。
寄付金や、公益事業の受益者から適正な水準の対価などを得ながら、
公益事業をファイナンスし続けることも重要であることは認める。
しかしながら、相応の金融資産(基金)を保有する公益法人においては
資産運用とそれからの運用果実は極めて重要、かつ有力な財源となる
ことは説明するまでも無いだろう。
特に、今の時代、「適切でない、不適切な資産運用」の状態を放置していることは、
法人としての善管注意義務違反、あるいは公益サービスと提供し続ける
という受託者としての責任を放棄しているに等しい。
さて、本題に入ろう。
かかる状況の下で、
「もしも法人内部の運用責任者だったら、どのように考え、振る舞うか?」
である。
そもそも公益法人(財団法人、学校法人、その他非営利法人)の運用目的とは、
明確かつシンプルなものである。
(1)「公益事業を超長期間にわたって維持・発展させる、未来永劫に連続する経常的な公益事業支出をファイナンスする」ものでなければならない。
その為には
(2)「組織として超長期に持続可能な資産運用」でなければならないのである。法人組織としては、(1)と(2)とが両立していなくてはならないのである。
そして、これらを両立させる重要な働きを本来担うのが、
法人内部の運用責任者なのである。
中でも特に、運用責任者として最も重視すべき意思決定基準とは、
「それは本当に、組織として持続可能な資産運用か?」
「いかに、組織として持続性を維持できるか?」
「その為には、更に何が必要になってくるか?」
である。
だから、これらに基づいて、
①運用内容そのものだけでは無く
②現在から将来の組織全体の内部事情のことまでも俯瞰し、想定して、
有効な施策を実行できるか否か
である。
つまり、「組織として超長期に持続可能な資産運用」を
法人内部に構築・維持できるかどうかは、以下の点を
十分に考慮できる内部の運用責任者の有 / 無、
あるいは彼(彼女)の手腕、振る舞いにかかっているのである。
- 経済・投資環境は変化してゆくことを前提とすること
- 法人の役員が交代してゆくことを前提とすること
- 法人内部の運用責任者自身さえも交代してゆくことを前提とすること
- その他
次回以降は、以上に列挙した1.~4.の要素について、一つずつ考察したい。