2021.10.04
法人資産の運用を考える(36) もしも、小職が法人内部の運用責任者だったら(4) 法人の役員の交代を大前提として、いかに運用管理の持続可能性を確保するか
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
前回は、「もしも、小職が法人内部の運用責任者だったら」、
法人運用を如何に持続可能に努めるかについて述べた。
結論的には、
(1)基本ポートフォリオ(=各種債券市場、不動産(REIT)市場、株式市場への資産配分比率=ETF(上場投資信託)によって複製・再現)と
(2)投資方針書(基本ポートフォリオについての合理性・納得性の有る説明書、仕様書)
について、準備するに違いないのであった。
これら、
(1)基本ポートフォリオやその考え方・内容を説明した
(2)投資方針書は、『法人内部の運用責任者としての最も重要な仕事』の基礎固めの役割を果たす。
彼(彼女)の『最も重要な仕事』とは、
組織の短期的および中長期的な運用目標の達成に努めるに当たって、
「①いかに言う事、やる事がブレないで居られるか」
「②組織の他の人もブレないで居られるような共有可能な意思決定基準を浸透させられるか」
「③ ①②の結果としてより確率の高い(=持続可能な、消去法的な)投資戦略を選択するか」
について、組織の為に、継続的に思案して、コミュニケーション出来ることなのであった。
さて今回は、法人役員の交代を大前提として、更に超長期にわたる、
運用管理の持続可能性を確保するかについて、法人内部の運用責任者としての仕事、振る舞いにについて考察してみたい。
法人の役員(理事、評議員)は交代を繰り返す。
それも数年ごとにドンドン替わってゆく。
小職の経験でも、10年も法人の運用責任者を担っておれば、少なくとも2回転~3回転ぐらいは、理事長、専務理事、常務理事らは総とっ替えになるのが普通である。
つまり、法人の財務やその裏付けとなる資産運用については、「初心者マーク」である役員らが次々とやって来る。
運用責任者は、彼(彼女)らに対して、実施している資産運用について説明し、
決済を仰がなくてはいけないのである。
その際に、運用責任者がしっかりしていないと、彼(彼女)らの交代のたびに、
法人の資産運用の一貫性、継続性が損なわれてしまう重大なリスクが伴う。
つまり、「もっと超保守的な運用に変更してしまうべきである」とか、
「もっと大胆かつ積極的な運用に舵を切るべきである」とかという、
彼(彼女)らの個人的、感情的な意見によって、
法人にとって大事な運用方針が、いとも簡単にコロコロと変わってしまい易いのである。
そうならない為に、運用責任者が果たすべき役割は極めて大きい、
つまり、
1)基本ポートフォリオ(=各種債券市場、不動産(REIT)市場、株式市場への資産配分比率=ETF(上場投資信託)によって複製・再現)と
(2)投資方針書(基本ポートフォリオについての合理性・納得性の有る説明書、仕様書)
の有り無しが決定的な役割を果たす。
それらは前任の役員(会)によって承認済みのものでも有る。
既に組織でオーソライズされている配分比率と方針書は、数字と文字とによって、
新人役員とも簡単に共通の意思決定基準として共有することができるのである。
これらのツールを使って、ブレないで説明し、行動する。
また、合理的かつ常識人であれば理解できる平易な言葉で、
(新任の役員、他組織内に向けて)粘り強くコミュニケーションし続ける。
ここに、法人の運用責任者としての真価の一つが問われるのである。