2021.09.09
基礎シリーズ 資産運用と投資アドバイスの「いろは」(1) なぜ分散投資が重要なのか①
基礎シリーズ梅本 亜南
本コラム『基礎シリーズ 資産運用と投資アドバイスの「いろは」』は、弊社の若手アドバイザーが資産運用や投資アドバイス業務などについて、日常業務の中からの気づきについて書き留めたものです。基本的な内容のものが多いので、公益法人・学校法人の資産運用だけでなく、個人の資産運用の初心者にも、お気軽に読んでいただけると思います。
今回のテーマ
「すべての卵を一つのカゴに盛るな」という格言があるように、投資対象とする資産、市場や銘柄にバリエーションを持たせる分散投資という考え方は、資産運用の世界において特に重要なものの一つと考えられています。今回は、資産運用において、なぜ分散投資が優れると考えられるのか、合理的な選択肢であると言えるのかを、「将来の不確実性」と「リスクとリターンの調節」という2つの側面のうち、「将来の不確実性」の側面に注目して確認します。
困難な将来の予測
株式、不動産、債券といった資産の区分や、新興国、先進国といった経済規模の区分が様々ある銘柄のなかで、いつ、どの銘柄が良いパフォーマンスを見せるのかを予想することは非常に難しいことです。なので、少数の銘柄に極端に偏らず、幅広く分散投資をする方が、大きな失敗を避け、長期目線での運用を成功させることができる可能性が高いのです。
図1は、2006年から2019年までのそれぞれ年間を通した、資産・経済規模別の市場のトータルリターンを表したものです。図を見るとわかる通り、いつ、どの市場がどれくらいのプラスリターンを取るのか、さらには、プラスとマイナスのリターンどちらを取るのかでさえ、パターンで見ることは非常に困難です。例えば、2012年を通して+36.7%というトップのパフォーマンスを見せた新興国REIT市場は、翌年には-12.0%と、その年で最低のパフォーマンスを見せています。
合理的な選択肢としての分散投資
こうした複雑な市場の動きを予想した上で運用を成功させ続けることが、非常に困難であることは想像に難くないはずです。さらに、資産運用のための体制を敷こうにも、人的、時間的、経済的、様々なリソースに制約を抱える投資家が少なくないでしょう。こうした状況下を鑑みれば、消極的ではあるかもしれないが、ヤマを張ることなく分散投資を継続することが合理的だと考えられるのです。
前節で示した市場の事実は、公益法人・財団法人・学校法人の資産運用においても、分散投資が重要であることを示唆しています。目まぐるしいパフォーマンスの変化に乗り遅れず、最も高いリターンを取る市場を予想する体制を整えること、そしてその運用計画を承認、執行すること、これらのことができる公益法人・財団法人・学校法人がそう多くはないはずである。このような法人の投資環境を考慮すると、分散投資は非常に効果的な運用手法と言えるのではないだろうか。