2021.10.04
法人資産の運用を考える(37) もしも、小職が法人内部の運用責任者だったら(5) 運用担当者・責任者自身の交代を大前提として、運用管理の持続可能性を確保する①
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
法人の役員(理事、評議員)は交代を繰り返す。
それも数年ごとにドンドン替わってゆく。
10年もたてば、少なくとも2回転~3回転は、理事長、専務理事、常務理事らが総とっ替えになる。
前回は、資産運用について「初心者マーク」である役員らが次々とやって来る。
そのような条件のもとで、
一貫性の有る持続可能な資産運用を維持する役割を果たすのは、
法人の運用担当者・責任者以外に存在しえない事を申し上げた。
今回は、更に、運用担当者・責任者自身さえも交代を繰り返すことを前提に、
いかに運用管理の持続可能性を確保するかについて考察してみたい。
財団法人などでは、10年間で2、3回は、運用担当者・責任者自身も次々と着任し、そして、去ってゆく
(それに比べると、学校法人などでは、運用担当者の任期は多少長めであるが、それでも、いずれ去ってゆくことには変わりない)。
だからと言って、法人の運用担当者・責任者の役割や責任が軽減される訳では無い。
これまで述べてきた「もしも、小職が法人内部の運用責任者だったら」
法人運用を如何に持続可能に努めるかについて、変更を加えることは非常に難しい。
- 基本ポートフォリオ(=各種債券市場、不動産(REIT)市場、株式市場への資産配分比率=ETF(上場投資信託)によって複製・再現して、組合せ)すること
- 投資方針書(基本ポートフォリオについての合理性・納得性の有る説明書、仕様書、組織として共有できる意思決定の基準)を準備すること
- (1)(2)について、平易な言葉、文字、数字を使って、役員らに対して、繰り返し、粘り強く、説明/提案/報告/その他のコミュニケーションを続けること
という運用担当者・責任者としての職務が替わるものでは無いのである
(持続可能な資産運用の為には、上記(1)(2)(3)の他に
替わるベターな方法が見当たらない、と言った方が正確かもしれない)。
つまり、上記(1)(2)(3)が達成できるか否かは、
法人の運用担当者・責任者の働き、能力の次第と言える。
彼(彼女)こそが中心となり、
その法人の資産運用と資産運用ガバナンスのクオリティを
左右していると言って過言で無い。
しかしながら、仮に、今は上手くいっていたとしても、
それは彼(彼女)の任期の間だけの話に限られる。
後任に替わった途端、その法人の資産運用と資産運用ガバナンスのクオリティが下がり、
市況や有価証券の発行体などの環境変化に翻弄される、
一貫性も持続性も損なわれるという事例は非常に多い。
だから、
真に、法人の運用管理の持続性を追求するのであれば、
彼(彼女)の任期のあとを担う人材の確保、育成こそは、
未来永劫に公益事業を継続しようとする法人の資産運用にとって、
実は最も重要な課題の一つで有ることが
容易にお判りいただけるのではないだろうか。
さて、「もしも、小職が法人内部の運用責任者だったら」、
対応策は以下の3つうちのいずれかしか無いと考える。
①内部人材の育成(能力の引き上げ)、
②能力の有る外部人材の法人内部者としての招請、
③法人運用担当者・責任者の機能を、実績が有り、信頼できる先へアウトソース、
のいずれかである。
また、
①②ケースの場合は、出来れば、彼(彼女)の後任育成も
法人内部で同時並行させるだろう
(つまり、法人内部に2名以上の運用チームを編成して、1名を後任として育てる)。
法人の資産運用と資産運用ガバナンスのクオリティの持続性を
担保してゆくには、以上の選択肢の中から、何とか見つけられないものか、
思案してみるに違いない。
次回は、①②③の対応策についてもう少し掘り下げてみたい。