2022.04.01
学校法人の資産運用を考える24 債券投資の基本がわかるシリーズ6債券の種類
学校法人の資産運用を考える粟津 久乃
この債券の基本シリーズのコラムでは1~5まで債券投資に関して、全体の話をしてきました。
ここから、数回に分けて、さらに細かく、債券の種類と見方などについて触れていきたいと思います。
債券と一言にいっても、様々な形式があります。
金融機関に勧められた時、どういう債券を見せられているのか、理解できるように
債券の種類についても考えておきましょう。
目次
債券の種類
下記の一覧をご覧ください。
債券というのは何で分類するか、という点で様々な種類を説明ができます。
詳細をみていきましょう。
①発行体による分類
どこが発行しているか、発行体で債券を分類すると主に下記のようなものがあります。
公共債
◆国債
国が発行する債券です。全ての債券の中で、最も信用リスクが低く、格付けが高いとされます。
国債の良いところは、既発の債券についても、単価がどの価格で
流通しているかがわかり(日本証券業協会にて掲載)、
証券会社への支払う手数料もある程度わかることでしょう。
こうした債券の手数料の関しては、債券シリーズ②で既に纏めました。
◆政府債
政府が発行する債券です。国債同様、政府が発行するので信用リスクが低いです。
◆地方債
地方自治体が発行する債券です。国債・政府債についで信用リスクが低いです。
民間債
民間債とは、企業が発行する債券で、社債と呼ばれます。
社債にはSBやCBと呼ばれるものがあります。
◆SB
普通社債のことです。(Straight Bondの略)
満期が設定されていて、満期までの間、利金が支払われる一般的な債券です。
通常、社債として話すものは、この普通社債のことを指します。
◆CB
転換社債というものです。(Changeable Bondの略)
転換社債は基本的には普通の債券と同じですが、
特別な条件がついており、一定の価格にて、
その企業の株式と転換することができる条件が付いています。
投資家は利金だけでなく、株式への転換によって、値上がり益も狙えます。
そのメリットの分、普通社債と比較すると利息が低いという特徴があります。
◆劣後債
名前の「劣る」という漢字からわかるかもしれませんが、債務の弁済順位が劣後する債券です。
その企業に万が一のことが訪れたとき、弁済順位は下がりますので、
資金を回収できる可能性が低くなります。
そうしたリスクの分だけ、利回りが普通社債より高くなっています。
この「劣後債」に関しては次回以降のコラムにて更に詳細を纏めます。
大学債
大学債とは、学術研究や施設改修などを目的とした資金調達として大学が発行する債券です。
2022年2月時点では、唯一、東京大学が発行しています。
この「大学債」に関しては次回以降のコラムにて更に詳細を纏めます。
②オプションの付帯による分類
オプションとは、ある金融機関をあらかじめ定められた期日に事前に
定めた価格で売買できる権利のことで、
こうしたオプション取引が入ったような債券を分類します。
◆仕組債
仕組債とは、その文字の通り、一般的な普通社債にはみられない、
特殊な「仕組み」を組み入れた債券です。
この「仕組み」は多岐に渡ります。
オプションなどのデリバティブ(金融派生商品)を利用することで、
投資家や発行体のニーズに合わせて、満期・利払い・償還金などを
設定して作成することができるものです。
この「仕組債」に関しては次回以降のコラムにて更に詳細を纏めます。
③通貨による分類
債券は様々な通貨の債券が存在します。
◆円建て債券(円債)
利払いと償還金が日本円で支払われる債券を指します。
海外の発行体が日本国内市場で発行する円建て債券は、特にサムライ債等とも呼ばれます。
◆外貨建て債券(外債)
発行体、利払い、償還金、発行市場のいずれかが海外の債券を指します。
外貨での発行となるので、為替リスクが発生します。
◆二重通貨建て債券(デュアルカレンシー債)
ディアルは二重、カレンシーは通貨を意味しますので、
そのまま、2つの通貨が使われる債券になります。
払い込みと利払いは同じ通貨で、償還金は異なるタイプの債券です。
よく見るのは、払い込みと利払いは円建てで、償還が外貨建てのものが多いかもしれません。
また、あらかじめ決められた判定日に為替水準次第で、
円建てで償還される特約(判定為替条項)がついているものもあり、
これは仕組債と呼ばれる分類にも当てはまるものであります。
なお、払い込みと償還が円建てで、利払いだけが外貨建てのものを
リバースデュアルカレンシー債(逆二重通貨建債券)といいます。
④利息の方法による分類
利息の支払いの形式も様々な形があります。
◆利付債
定期的に利息が支払われる債券を利付債と呼びます。
償還までの利率が決まっている、「固定利付債」と、
償還までに利息が変動する「変動利付債」があります。
参考までに混同されやすいので、「変動利付国債」と「物価連動国債」について触れます。
「変動利付国債」というものは、利金が変動していく「変動利付債」です。
受け取る利率が市況に応じて変化していきます。
一方「物価連動国債」(インフレ連動国債)は、
実は利息は固定されている「固定利付債」です。
ただ、物価の連動に変動して元本が変わるため、
物価上昇すれば上昇率に応じて元本が増えて、
受取る利息も増えます。
利率は変わらないのですが、受取利息が増えるという形式です。
◆割引債
割引債は、その名前の通り、発行時に額面金額より、
割り引いで発行され、利息がゼロの債券になります。
利息が支払われない代わりに、発行金額より低い額面価格で発行され、
償還時に額面金額で償還されます。
そのため、発行価格と額面金額の差が、最後に償還するときに償還差益として利益になるものです。
例えば、100円が発行価格、額面金額が95円ならば、償還時に100円-95円の差額5円が償還差益となります。
◆ディスカウント債
利付債と割引債の両方の特徴を併せ持った債券をディスカウント債と呼びます。
ディスカウント債は、発行時に同じ格付けや同じ期間の利付債よりも利率は低めに設定されます。
その分、発行価格が額面金額よりも低く設定されており、
償還時には額面金額で償還されるので、償還差益が出ます。
⑤信用リスクの違いによる分類
発行体の信用リスクで分類されることもあります。
◆投資適格債
発行体のデフォルトリスク(債務不履行リスク)が低く、
信用力が高い債券のことであり、
具体的には、格付け機関が行う格付においてトリプルB(BBB)以上となります。
S&P社ならばBBB以上、Moody’sならば、Baa以上と取得した債券を指します。
一般的には、元本割れの危険性が低い分、利回りも低くなっています。
英語では「エンジェル・ボンド(Angel Bond)」と呼ばれております。
皆様が債券を管理する上で、格付け管理を重要視しているかもしれません。
参考までになりますが、投資適格から、投資適格未満に格下げをされた
債券を「フォーリン・エンジェル債」と呼び、フォーリン・エンジェルだけを
対象にしたファンドも存在します。
というのも、皆様の運用規定が投資適格以上、となっている場合、
投資適格未満になると一斉に売却してしまうことがあります。
しかし、格付け、というものは変動しますので、
その規定によって一律に売却されることを狙って、
単価が相対的に安くなった投資適格未満の債券を購入するような運用手法を
考えているファンドもあるのです。
◆投資不適格債券(ジャンク債)
信用度が低いものを投資不適格債券と呼びます。
具体的には、BB以下の債券が投資不適格に区分されます。
主な格付ではS&PでBB+以下、Moody‘sではBa1以下となります。
投資不適格債券はジャンク債とも呼ばれますが、
格付けが低い分、一般的に通常の債券より高い利回り(ハイ・イールド)であるために、
ハイ・イールド債と呼ばれることもあります。
以上が、投資適格債と投資不適格債の説明になりますが、
投資適格債は4段階の区分(AAA~BBB)があり、
投資不適格債には5段階の区分(BB~C)が主にあります。
なお、投資適格債⇒投資不適格債、投資不適格債⇒投資適格債への変化が
おこるものですので、格付け管理は常に行う必要があるものです。
⑥発行される時期による分類
債券を購入するときは、発行される時期で、新発か、既発か、とわかれます。
◆新発債
新発債とは、新しく発行される債券になります。
日本においては通常、額面100円にて発行されます。
新発債は、当初の募集期間週にしか買えないことが原則で、
通常、直接発行体から購入するか、証券会社を経由することになります。
メリットは、発行日・発行体・満期日・利率などの発行条件は
あらかじめ決まっているので、購入価格や利回りを事前に
あらかじめ知ることができます。
また、基本的に他の投資家と同条件で購入できますので、不利な条件になることはありません。
デメリットは、発行されるときしか購入できず、新発だけに限ってしまうと、
銘柄選択の余地があまりに無くなります。
また、銘柄によっては機関投資家のみに発売され、機関投資家以外には販売されないこともあります。
◆既発債
既発債とは既に発行された債券のことを指します。
流通市場において投資家同士(投資家と証券会社による相対取引を含む)が
売買うする相対取引のため、購入金額や利回りなどは市場金利の動向などに
応じて日々変化することが特徴です。
相対取引の難しさ、既発債の手数料については
債券シリーズのコラム②にて、詳細を述べましたので、そちらをご覧ください。
メリットは新発債よりも多く流通しているので選択肢が広がります。
新発債は、5年満期で100万円購入して、利率1%でしたら、
年間1万円の利息が5年間もらえるので、非常に分かり易いです。
一方で、既発債は、利回りの計算が少し複雑になりますので次回に少し触れる予定です。
次回からは債券の見方について考えています。