2013.04.15
現在進行形の資金運用管理は、リーマンショック並みの危機の再来にも耐えられるか(1)
梅本 洋一私論公論(高等教育情報センター)
◆アベノミクスで再び始まった大学資産運用の「綱渡り」
今年の流行語の一つになるであろう「アベノミクス」。そのおかげで10年国債利回りは0.5%前後まで急低下、円/ドルは90円台後半まで円安が進み、日経平均株価は13000円台を一時越えている。ほんの半年前は、現在のような状況が到来するとは、想像することも困難な運用環境であった。まるで嘘のような激変である。
と、同時に最近の運用担当者の心理、行動も変化しているように思われる。一番の原因は、10年国債利回りは0.5%前後まで急低下したこと、つまり、オーソドックスな債券運用では運用益と呼べるほどの収益は最早上がらないということである。オーソドックスな債券運用以外の資産運用に再び傾倒し始めた法人の話を耳にするようになってきた。
「●●電機などのクレジットリンク債で通常の社債以上のインカム収入を狙っています。」
「3~5年満期の日経平均株価リンク債=期待インカム利回り3%を取得してみました。」
「2年以内満期の既発仕組債を証券会社からオファーがあったので買いました。」
「最近再び仕組債(クレジット、株価、為替などのデリバティブを参照することでインカムが決定する債券)を取得する割合が増えてきたのには釈然としていませんが、運用担当としては仕組債を現在無視しては運用にならないので、やむを得ず、取得し始めています。」
その他にも、不動産や外債、株式についても直接取得する、あるいは取得することを検討し始める法人も増えてくるに違いない。その如何は、アベノミクス・マジックがまだまだ継続しそうかどうかという相場次第であろう。
◆現在進行形の資金運用管理は、リーマンショック並みの危機の再来にも耐えられるか
しかしながら、大学資金運用関係者の皆さん、今一度よく考えていただきたい。「現在進行形の資金運用管理を続けた場合、仮に半年後、リーマンショック並みの危機の再来に耐えられるだろうか。」ということを。リーマンショック、世界金融危機、ギリシャショックから現在に至るまで、たくさんの大学が痛手を被っている原因は何処にあったのか。過去の失敗について本当に有効な反省、改善策を経て、現在の資産運用管理に至っているのだろうかということを。
確かに当時と違い20年、30年満期の仕組債の取得ではなく、比較的短期償還の仕組債ではリスクは小さいと思っているかもしれない。しかしながら、当時の仕組債投資も実際には(早期)償還目的の短期運用が実態ではなかっただろうか。たまたま(早期)償還を迎える度に、まだまだ好環境は続く、暴落はあり得ないことを祈りながら、同様の仕組債に再投資を続ける(あるいは続けざるを得なかった)ということをついこの間の危機の直前まで行っていたのではないか。
クレジット、株価、為替など好環境も永久に続くわけではない。いつか、そして突然、市況が逆転する可能性は常に存在する。その時、それまで順調だった(早期)償還⇒再投資の流れがストップするのと同時に、ババ抜きのババを引くように、甚大な評価損や実現損を抱え込む事態に陥ったのではなかったろうか。
果たして、現在進行形の資産運用管理において、過去のそれとは何が、どれだけ違うといえる大学法人はどの程度存在するのだろうか。耳にする運用現場の声を聴く限り、今回もいつか過去と同じ過ちを繰り返す可能性が高いと危惧せざるを得ない。
以上