2022.11.18
法人資産の運用を考える(48) 法人の運用責任者(CIO)の確保と育成を考える(2) 運用責任者(CIO)の確保・育成の留意点【専門知識・専門能力編①】
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
まず、資産運用責任者(CIO)の仕事のスタートラインは、
組織の運用目的・目標とそのための手段の理解である。
それ以降の仕事は全て、この原点に沿っているかどうかということを
慎重に判断しながら進めることになる。
未来永劫に連続してゆく事業支出をファイナンス、あるいはファイナンスできる
ゆとりを確保することであり、それが達成されるためには、
組織としてできるだけ超長期に持続可能な資産運用(主体的な理解、管理が可能なもの)を
手段として選択しなければならない。
【C】(年金)コンサル(その他一般の金融機関サービス)を
利用する場合は留意が必要である。
彼らは手段の部分の分析・推奨に特化、自らの専門性を顧客に誇示したがる傾向がある。
定量分析、推奨モデルポートフォリオ、推奨ファンド・・・・
とにかく、専門用語、スペックの話など難解である。
これでは、組織として超長期に持続可能な資産運用
(主体的な理解、管理が可能なもの)という条件を、
最初からクリアできない危険を抱えてしまう。
資産運用責任者(CIO)は、法人の会計・決算、法令などの専門知識にも明るく、
それらの制約・条件と実施する資産運用を整合させるのは言うまでもない。
また、法人固有の収支フロー・ストックの内訳を理解し、
それらについての将来のリスクも想定した上でないと
適切な目標設定や中期運用計画の策定は難しいであろう。
さらに、具体的な資産運用に関する専門知識については、
前述のコラム『法人の資産運用を支えるロジック(1)~(8)』で
紹介した学術・実証研究が示している事実を深く理解、考慮した上での、
資産運用における意思決定の基準に精通している必要がある。
机上の知識として判っているだけでは不十分で、実務経験は必須である。
少なくとも5年(できれば10年以上)のポートフォリオ・マネジメントの経験が有る事
(基本ポートフォリオを策定、運用執行=取引金融機関/条件/コスト・信託報酬などの検討/条件交渉/選定、モニター、メンテナンスした経験まで有する事)
が望ましい。
また、潜在リスクの想起力も、資産運用責任者(CIO)に不可欠な資質・能力である。
潜在リスクの想起力とは、
(現在起こっていなくても、もっと言えば、実際に未来永劫起こることはなくても)
起きて欲しくないこと、最悪の投資環境などを想起できる
(自然と想起してしまう)ことである。
そして、日頃から、そのようなリスクへの対応策を
いくつか想定、準備できているという
(無意識的に対応策を思案してしまう)ところまでを含む。
さて次回は、資産運用責任者(CIO)に求められるこのような専門知識・専門能力について、
【C】(年金)コンサル(その他一般の金融機関サービス)に頼る場合の留意点
について考察してみたい。