2023.02.07
法人資産の運用を考える(51) 法人の運用責任者(CIO)の確保と育成を考える(5) 運用責任者(CIO)の確保・育成の留意点【後任の確保・育成とその費用】
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
繰り返すが、公益法人の資産運用を『適切』に保ち、
その『持続可能性』を高めてゆくためのカギとなるのは、
適切な資産運用責任者(CIO)の確保と育成である。
①内部人材の育成(能力の引き上げ)
②能力の有る外部人材の法人内部者としての招請
③法人運用担当者・責任者の機能を、実績が有り、信頼できる先へアウトソース
のいずれかである。
また、①②のケースの場合は、彼(彼女)の後任育成も法人内部で
同時並行させないと(つまり、法人内部に2名以上の運用チームを編成して、
1名を後任として育てる)、『持続可能性』は高められない。
今回次回と、資産運用責任者(CIO)の確保と育成に当たって、
その他の留意点について比較してみたい。
(a)後任の育成・確保について
まず、現在の運用責任者(CIO)の後任の確保・育成の必要性についてであるが、
法人の内部者として上記①②を試みる場合でも運用の『持続可能性』を高めるため
には、後任の確保・育成は必須であることが判る。
③の法人運用担当者・責任者(CIO)の機能を、実績が有り、
信頼できる先へアウトソースする場合でも、アウトソース先の経営、
人材に継続性が有れば学校法人が後任を探す必要はないが、
そのような条件を満たすアウトソース先かどうかについては留意する必要が有る。
また、【C】(年金)コンサル(その他一般の金融機関サービス)の場合でも、
学校法人は別途後任者を確保・育成する必要が有ろう。
なぜなら、彼らの主たる業務は、定量分析の提供、個々の投資戦略や
ポートフォリオやファンドの推奨・提案に留まる。
それらの推奨を受けた後の組織内での調整、意思決定あるいは
その後も続く必要な平易な組織内コミュニケーション、段取り、
それ以外の運用資産を含めた全体のポートフォリオのマネジメントを
行うのは内部の運用責任者(CIO)しか出来ない仕事となるからである。
(b)資産運用責任者(CIO)およびその後任の育成・確保と費用について
次に、資産運用責任者(CIO)およびその後任の確保・育成の費用に
ついてであるが、内部(CIO)であれ、外部アウトソースであれ、
(名目は異なるが)費用は掛かる。
特に、内部(CIO)を育成するのであれば時間コストもかかる。
また、外部から専門的な経験者を招請できれば時間コストは節約できるが、
優秀な人材ほど人件費も高くなる。
すぐに契約解除できる業務委託契約という訳にもいかないだろうから、
公益法人との雇用契約締結や提供するポストや金銭面を含む
その他諸々の処遇を約束しないと優秀な資産運用責任者(CIO)候補を
外部から招聘するのは難しいであろう
(当事者にしてみれば、この法人で居場所を失ったら他に行くところがないリスクを
抱えて来ないといけないのだから)。
このように、たった一人でも、法人内部の資産運用責任者(CIO)の確保・育成には
結構いろんなコストはかかる。
さらに、その後任も含めた複数人数のチームとなると軽く考えてはいけないことが判る。
更に次回は、公益法人とその運用責任者(CIO)などの間に潜む
受託者責任とキャリアリスク、利益相反リスクなどについても考察してみたい。