2023.03.16
法人資産の運用を考える(52) 法人の運用責任者(CIO)の確保と育成を考える(6) 運用責任者(CIO)の確保・育成の留意点【受託者責任、キャリアリスク、利益相反】
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
資産運用についての推奨や提案の内容は、個人や所属する組織の偏見(バイアス)、
利害関係に大なり小なり影響を受けてしまう。
判り易いのは、
【B】アウトソースCIO(法人のCIO機能のアウトソース)や
【C】(年金)コンサル等(一般の金融機関サービスを含む)の場合で、
そのアドバイザーやコンサルの得意分野/不得意分野、所属する会社との利害関係が
影響して、公益法人に対して偏った推奨や提案をしてしまうかもしれない。
これらはアドバイザーやコンサルに対してインタビューを重ねたり、
所属する会社についてよく調べたりすることである程度は
事前に把握、回避、対処できるものでもある。
さて、偏見(バイアス)、利害関係の影響を受けやすいのは
外部のアドバイザーやコンサルに限ったことではない。
実は、内部の資産運用管理責任者(CIO)も同様の影響を受けやすいのである。
そして、残念なことに、彼(彼女)が内部者であるが故に盲点となって、
公益法人自らがそのことを公平な視点で認識できない状態がずっと続いてしまうことも少なくない。
例えば、債券運用、不動産運用など、対象は何でもよいが、
特定の投資(種類、やり方のスタイル)に固執、偏ってしまうというケース
などがそれである。
これは、内部の資産運用責任者(CIO)が、
自分が得意な(得意だと思っている)、
良いと思っている(キャリアとして手柄を立てたい)、
自分が責めを負いたくない(負わずに済みそうな)、
などという個人の偏見(バイアス)と所属する組織との利害関係に起因
しているものなのである。
中でも、内部の資産運用責任者(CIO)と所属する組織との利害関係に起因する
「キャリアリスク」の存在は彼(彼女)の言動に非常に大きな影響を与える。
最悪の場合、彼(彼女)は失職する、
あるいは組織の中でのポジションを失うリスクがある。
だから、組織に必要と思われる提案でも、組織が耳障りと捉えそうな提案については、
(忖度して)慎重になったり、極端に保守的な提案に留まろう
としたりすることは想像に難くない。
また、逆のケース、自分のポジション・業績をアピールするために、
不必要なリスクを取ることを組織に対して提案したりすることもある。
一方、外部者である
【B】アウトソースCIO(法人のCIO機能のアウトソース)や
【C】(年金)コンサル等(一般の金融機関サービスを含む)の場合は、
同様のキャリアリスクは抱えていないので、組織に耳障りな提案に慎重になるインセンティブは働かない。
しかしながら、特に
【C】(年金)コンサル等(一般の金融機関サービスを含む)の場合は、
逆に、組織やそのスタッフに対して、耳に聞こえの良いことを言って
(他に勝る、優れた、他の皆がこぞって活用を始めた投資戦略・ファンドなどと言って)、
顧客に不必要なリスクや複雑なリスクを追加で負わせやすい。
なぜなら、彼らは、公益法人が負う受託者責任と同じ責任は負っていないのである。
そもそも、公益法人という公金を預かって運用管理する主体が負う
受託者責任と同一の責任を負う立場には居ない。
彼らの立場は、彼らが考える優れた投資アイデアを、主たる業務の範囲の中で
(定量分析の提供、個々の投資戦略やポートフォリオやファンドの推奨・提案までで)、
顧客に提案することに在る。
一方、【B】アウトソースCIOは、公益法人が負う受託者責任と同じ立場か、
それに非常に近い立場で仕事をする。
つまり、経済的、時間的、専門知識的にも余裕があるのであれば、
法人内部で優秀な資産運用責任者(CIO)を確保・育成することに勝るものは無い。
しかしながら、前述したとおり、現実には、自身のキャリアリスクを回避する為に、
法人の利益と一致しない言動をしてしまう未熟な内部資産運用責任者(CIO)は少なくない。
そこで、
【B】アウトソースCIO(法人のCIO機能のアウトソース)が
この問題の解決策の一つになるのではないかと期待される。
内部の資産運用責任者(CIO)を、その本来求められる業務・責務を全うできるように
外部から支援するサービスである。