2023.04.09
法人資産の運用を考える(53) 金融業界の潮流と法人資産運用の未来(1) 投資家リテラシーとインデックスファンドの台頭
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
2023年2月7日付けのモーニングスターによれば、
「三菱UFJ国際投信が設定・運用する
「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の純資産残高が
2月6日に国内の全公募投資信託(ETF除く)でトップになった。
残高は1兆8065億円で、これまで1位だった
「アライアンス・バーンスタイン 米国成長株投信Dコース予想分配金提示型」の
1兆7977億円を抜き去った。
ETFを除くと公募のインデックスファンドが純資産残高でトップに立ったのは初めてのことだ。
つみたてNISAの導入によって本格化した投信を使った積立投資が定着してきたことを
示す象徴的な出来事になった。」とある
続いて、「三菱UFJ国際投信が大手ネット証券5社にヒアリング調査した結果、
2022年12月末時点で同ファンドを保有している投資家の人数は
5証券合計で246万人を超え、21年12月末時点と比較して約90万人増加した。
ネット証券には投資勧奨してくれる営業担当者がいないため自ら進んで投資を開始する
必要があり、しかも、ネット証券の投信の取り扱い本数は多いにもかかわらず、
同ファンドを選んで投資するという動きが継続している。従来の大規模ファンドが、
大手証券など強力な販売力を持った販売会社が関わって、時には数千万円や億円と
いうまとまった資金を積み上げて販売した結果だったことと比較すると、
毎月5000円や1万円の積立投資が数百万人という規模で重なって1兆8000億円を
超える残高を実現したのは、時代の変化を感じさせる。」とある。
従来の大規模ファンドが、大手証券など強力な販売力を持った販売会社が関わって、
時には数千万円や億円というまとまった資金を積み上げて販売した結果だったことと
比較すると、まさに時代は変わったように思われる。
ネット証券には投資勧奨してくれる営業担当者がいないため自ら進んで投資を開始する必要がある。
ゆえに、この現象は、何百万人という個々の個人投資家、自らの意思決定の結果であり、
彼らに現時点で備わった金融リテラシーの結果と言える。
つまり、低コストのインデックス運用が超長期の資産形成に向いていると
判断している結果である(筆者としては、分散投資という観点から、
米国株式インデックスファンドに傾倒する現状はどうかと思う部分は否めないが)
しかしながら、いずれにしろ、個人投資家のリテラシーは、
大手証券など強力な販売力を持った販売会社の推奨販売を上回り始めている証と言える。
更に、今後予定されているNISAの恒久化で、この傾向は、一層、拍車がかかり、
販売力に依存した旧来の大手販売会社(証券・銀行)を置き去りにし、
もう後戻りしないものとも思われる。
さて、法人の資産運用の基礎として、ETFを使ったインデックス運用
(様々なインデックス運用を組み合わせ、分散投資したポートフォリオ運用)を
長年にわたり推奨してきた筆者としても、今後、法人の運用担当者や役員ら
皆さんの金融リテラシーも大いに向上していくのではないかと期待している。
ただし、個人資産運用と異なり、法人資産運用は「自分ものでないお金」を扱うため、
より責任が重く、毅然とした説明が求められる。
その為、多くの法人資産運用では証券会社などの営業担当者にその責任・説明の
一端を転嫁せざるを得ない現状は理解できる。
しかしながら、決して彼らを鵜吞みにせず、自ら判断・説明できる金融リテラシーの
研鑽に励んでゆかれることを期待している。