2023.05.22
法人資産の運用を考える(54) 金融業界の潮流と法人資産運用の未来(2) 顧客の立場に立った「認定」投資アドバイザー / 投資アドバイスという議論
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
2022年12 月 16 日に決定した与党(自民党と公明党)の
2023 年度/令和 5 年度税制改正大綱が大きな話題となっている。
中でも、大きいのは資産所得倍増プランの目玉と言われる
「NISA の抜本的拡充・恒久化」だ。
また、「顧客本位の業務運営を推進する制度整備、
消費者に対して中立的で信頼できる助言サービスを促進するための仕組みづくり、
金融教育等の充実により、『資産所得倍増プラン』を着実に推進する。」
(2022 年 12 月 16 日決定の予算編成大綱~)とも明記されている。
2022 年 12 月 21 日付日本経済新聞電子版では
「抜本改革される NISA は、同時に実施される個人への投資アドバイス体制
の抜本改革と併せて、日本の『投資の風景』を大きく変える潜在力を持っている。
…(略)…。
あまり知られていないが、NISA 抜本改革と並行して、
金融庁内では投資や金融の個人へのアドバイス体制に関する非常に重要な改正論議が進んでいる。
官邸から金融庁へかなり早い段階で
『NISA 拡充は、顧客本位のアドバイザーづくりや金融教育の強化とセットだ』
という指示が来ていたからだ。
NISA の抜本改革による変化は、個人の資産形成へのこうした幅広い支援策と
合わせた全体像で考えるべきだ。
…(略)…。
金融庁は顧客本位の『認定アドバイザー』をリスト化し公表する方針だ。
認定の条件としては
①金融商品を販売していない
②金融機関から手数料などをもらっておらず報酬は顧客だけから受け取る――
などが検討されている。
これは販売と実質的に切り離し
『利益相反のないアドバイス』をするアドバイザーを『見える化』するという、
これまでなかった非常に重要な取り組みだ。
…(略)…。
はるかに強力になる総合 NISA と、顧客本位のアドバイス体制や
継続的な金融教育がセットになれば、日本の投資の風景は大きく変わる可能性がある。」
と報じている
(2022 年 12 月 21 日付日本経済新聞電子版「NISA 抜本改革、日本の「投資の風景」変える潜在力」~より)
今のところ、この議論は個人投資家のNISA、iDeCoなどの非課税投資、
資産形成投資に限定した議論の様である。
長年、法人投資家に対して、
①金融商品を販売しない
②金融機関から手数料などをもらわず報酬は顧客だけから受け取って、投資アドバイスを提供
してきた著者から見ても、この議論は核心をついていると思う。
つまり、政府、公的な見解も、
①金融商品を販売する行為
②金融機関(金融商品のメーカーや販売会社)から手数料を受け取る行為は、
顧客である投資家に対して業者側の利益を優先してしまうバイアス、
利益相反を醸成する温床になりやすい事に、既に気が付いているのである。
しかしながら、『認定アドバイザー』制度を作っても、
その制度が優秀な投資アドバイザーの確保・育成に寄与するかどうか
と言われれば、どうも曖昧、突っ込んだ議論にまでは至っていないようである。
今後この議論がどのように具現化するのか成り行きを見守りたいが、
仏を作って魂入れずの状態に成らないことを祈るばかりである。
さて、殆どの法人投資家のケースをみても、
取引先は専ら証券会社(金融商品の販売会社)であろう。
しかも、その証券会社の担当者からの何等かのアドバイスや
情報提供してもらって投資判断しているのではないだろうか。
法人の資産運用業務を円滑に推進し続ける為には、
そうせざるを得ない業務環境、制約が有ることは十分に理解できる。
しかしながら、当時に、法人の自己防衛の為にも、
彼らのいう事を鵜吞みにするばかりでなく、
自ら投資判断・説明できる金融リテラシーの研鑽に励んでゆくことが求められる。