2023.05.21
基礎シリーズ 学校法人・財団法人の運用における市場平均指数連動型ETF活用のメリット
基礎シリーズ梅本 亜南
弊社のアドバイスで用いている「市場平均指数連動型ETF」。今回は、なぜ市場平均指数連動型ETFを用いているのか、学校法人・財団法人のような公益法人の運用の観点から説明していく。
市場平均指数連動型ETFとは
読んで字のごとく、「市場平均指数連動型ETF」とは「市場平均指数(インデックス)に連動するように運用されているETF」を指す。ETFそのものについてここでは金融商品の一形態であるという説明にとどめておくとして、今回は「市場平均指数」の説明から入りたい。
市場平均指数とは、特定の市場のすべての銘柄の価格を統計的な手法で集計し、その結果を単一の数値として表現したものである。ニュース報道や新聞などを見ていると「米国の株式市場」などと言われることがあるが、市場平均指数とは、こうした特定の市場の実態を具体的な数字で表すものであると考えていただければと思う。
多くの方になじみがあるであろうTOPIXは、市場平均指数の一例である。TOPIXは、正式名称を『Tokyo Stock Price Index』と言い、「日本の上場株式市場」の市場平均指数である。そして、このTOPIXの動きに連動するように運用されているETFが、「TOPIX連動型ETF」である。
このように、特定の市場の実態を表す市場平均指数に連動することを目指して運用されているETFが、「市場平均指数連動型ETF」なのである。
なぜ弊社では、この市場平均指数連動型ETFを用いることを提案しているのか。それは、投資家の成功の可能性を高める、長期的な運用継続のためのツールとして最適であると考えているからである。
運用資産の幅広い分散
市場平均指数連動型ETFが長期投資の継続に適したツールであると考える理由の一つは、運用資産の幅広い分散が可能な点にある。
ここで例として、『Vanguard Total World Stock ETF(ティッカーコード:VT)』というETFを取り上げたい。VTは主要な全世界の株式市場を投資対象とする市場平均指数連動型ETFである。このETFが追いかけている市場平均指数『FTSE Global All Cap Index』を見てみると、市場の時価総額が約8900兆円、構成銘柄数が約9500銘柄と、このETFの裏側には非常に大きな市場、多くの銘柄があるということがわかる。
こうした市場に幅広く網をかけるような運用をすることで、特別に大きく資産の価値が膨らむということが起こりにくい反面、特別に大きく、時に個別銘柄に起こり得る回復困難な程度にまで価値がなくなってしまうということも起こりにくくなる。個別銘柄運用のように暴落に見舞われて強制的に運用を手じまいしなくてはならなくなる可能性を低くすることもでき、投資家心理的にも市場に留まり運用を継続しやすくなる効果も期待できる。
分配金収益の安定性・予見可能性
市場平均指数連動型ETFが長期投資の継続に適したツールであると考えるもう一つの理由は、分配金収益の安定性・予見可能性が高まるという点にある。
市場平均連動型ETFから払い出される分配金は、投資対象としている市場の構成銘柄の利子・配当収入の加重平均値となる。つまり、特定銘柄の業績悪化などによる株式の増減配や無配、特定の国の政策による金利変動による受取分配金へのインパクトを分散することができ、単一銘柄からの利子・配当金よりも収益の安定性に優れ、投資家が事業予算を検討する際の予見可能性も相対的に高いと言える。
こうした性格は、毎年の運用収益を後ろ盾に事業運営のための資金を予算化する必要がある学校法人・財団法人等の公益法人にとって、非常に使い勝手が良いと言える。毎年払い出される分配金収益は、保有するETFが投資対象とする市場の市場平均利回りにおおむね収斂することが見込めるので、個別銘柄運用で起こり得る減配・無配化や急激な金利低下等で、予算化された年度の事業運営が立ち行かなくなる可能性を低くすることができるのだ。
このような安定的・予算化しやすい収益構造を採用することで、投資家は長期的に運用を継続しやすくなることが期待できる。