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2023.08.09

法人資産の運用を考える(57) 法人資産運用アドバイス業務の15年間を振り返って(1) 最も信頼に値すると考えられる投資対象とは

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

著者の経営する会社は公益法人、学校法人などの

法人資産運用アドバイス業務を開始して15年になる。

15年間で得た教訓についてシェアしたい。

それぞれの法人の資産運用の参考にしていただけることがあれば幸いである。

まず初めに、「最も信頼に値する投資対象とは何か?」である。

つまり、法人の運用資産、ポートフォリオを構成する投資対象として

「超長期的に何を選択するのがベター」かという問題を突き詰めて考える必要が有った。

独立して現在の法人資産運用アドバイス業務を開始する

以前は大手証券会社に勤務、投資家に個別の株式や債券、

各種投資信託にセールスする仕事からキャリアをスタートした。

しかしながら、自分なりに調べて、これならと思って勧めた株式や債券、

投資信託でも投資家の利益に繋がることは中々無かった。

しかも当時は3,4年のローテーションでセールス現場の異動があった。

短い在任中のセールス成績のみが評価されるシステムに限界も感じて居た頃だった。

偶然、書店で見つけた「敗者のゲーム」(チャールズ・エリス著)を

パラパラとめくってみた時は衝撃だった。

この本によれば「金融市場全体(に連動するインデックスファンド)を保有して、

ただ待てば良い。

①安く買って、高く売ろうとすることはナンセンス

②有望そうな株、債券の個別銘柄を当てっこするのもナンセンス

=③ ①②についてはプロのファンドマネージャーに運用委託しても同じ。

殆どの投資のプロは金融市場全体(に連動するインデックスファンド)に負けている。

必然的に、負ける運命にあるゲームをしているにすぎない」と明言しているのであった。

上記①②③は、若いころの著者が、証券セールスとして、

顧客に利益をもたらす源泉に違い無いと信じていたことでもあった。

もしも「敗者のゲーム」の主張が本当なのであれば、自らの証券セールス、

金融プロとしての存在価値も無いということになる。

この本に自己否定されたような苛立ちも覚えたものである。

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しかしながら、この本は反論しがたい理論と実証に基づいて展開されており、

何より、一般常識を働かせて考えても妙に腑に落ちる主張であった。

また、著者の経験上も、他の①②③が上手くいっていないという現実とも符合した。

つまり、最も信頼に値する投資対象として、金融市場全体

(に連動するインデックスファンド)こそが投資家の利益に繋がる、

消去法的だが。近道かもしれないと考えるに至ったのである。

だから、弊社顧客のポートフォリオは、グローバル株式市場全体、

グローバルREIT市場全体、グローバル債券市場全体の価格変動と

利子配当利回りのそっくり複製と享受を目指すETF(上場投資信託)

組合せによって構成されている。

一方、個別の株式、REIT、債券(元本保証であることや、格付けの高さ、

確定利付きであることさえも)、あるいは、それらの銘柄選択や売買タイミングを

ファンドマネージャーに委託するのでは、投資対象としての

超長期的な信頼性に劣ると考えている。

また、グローバル金融市場全体で考える訳も、その方が信頼に値すると考えるからである。

例えば、日本資産に拘り過ぎると、失われた30年などという間の悪いタイミングに

当たってしまうかもしれないし、ロシア資産の様に金融市場から締め出しを被り、

大きく足を引っ張られるかもしれない可能性が有るからである。

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