2023.11.18
法人資産の運用を考える(60) 法人資産運用アドバイス業務の15年間を振り返って(4) リーマンショック、世界金融危機、コロナショックなどを乗り越えて
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
著者の経営する会社は公益法人、学校法人などの法人資産運用アドバイス業務を開始して15年になる。
15年間で得た教訓についてシェアしたい。それぞれの法人の資産運用の参考にしていただけることがあれば幸いである。
弊社顧客のポートフォリオは、グローバル株式市場全体、グローバルREIT市場全体、グローバル債券市場全体の価格変動と利子配当利回りのそっくり複製と享受を目指すETF(上場投資信託)の組合せによって構成されている。
そして、そのようなポートフォリオを超長期間にわたり、一貫して堅持することを推奨・アドバイスしている。
そしてこの15年間では、リーマンショック、東日本大震災、コロナショックなど数々の金融市場の激変を経験してきた。
この間、株式市場やREIT市場の大暴落、急激な円高・円安、デフレ・超低金利からインフレ傾向・金利上昇局面など様々なイベントがクライアントの運用ポートフォリオを変動させてきた。
例えば、リーマンショックから世界金融危機へと続いた時期には、株式市場やREIT市場は▲50%以上も下落し、円ドル為替は80円を超える円高を記録した。
この渦中を乗り越えることが出来ずに、紙くずになってしまった株式やデフォルトしまう債券も続出した。
また、東日本大震災では国内市場に大打撃をもたらした。
中でも、当時は優良発行体の筆頭の一つと考えられていた東京電力をはじめとする電力会社株・電力債が大暴落してしまった。
コロナショック時には全世界の株式市場・REIT市場がたった1か月で▲30%以上も暴落するというショッキングなものであった。
また、これらの金融市場の渦中での倒産やデフォルトを何とか免れた発行体も、その後は長期低迷を続けたまま、現在もかつての状態までに回復・復元しない発行体も沢山ある。
その他の数々のショック、あるいは為替や金利の大変動サイクルの渦中にあっては、世の中は決まって、肝をつぶし、将来を不安視し、悲観した。
中には、資産運用を最悪のタイミングで途中解約、諦めてしまう投資家も数多くあったことだろう。
しかしながら、これまでの弊社の15年間の経験を振り返ると、グローバルで見た金市場全体では、「一時的」な激変を何度も経験しているが、またそこから回復・復元してきた。
しかも、そのような暴落&回復・復元を何度も繰り返しているのである。
つまり、弊社が15年間で得た教訓とは、
グローバル金融市場全体の価格変動と利子配当利回りをそっくり複製するような
運用ポートフォリオで考えた場合では、最終的な成否(投資家が手にする運用成果)は、
金融市場がどう振る舞うかで決まることは無い。
むしろ、運用成果を決めているのは、投資家の側がどう振る舞うかで決まる、ということである。
(ただし、個別銘柄や個別業種、個別地域への偏った運用内容には、この教訓は当てはめることはできない。なぜならデフォルト、長期低迷(失われた30年など)、国際金融市場からの排除(ロシア事例)など、大きく間違う、外れる危険も高くなるからである)
今後も様々な新たな金融市場のイベントが起こり続け、運用ポートフォリオを変動させ続けることになろうことは自明の理であり、我々も我々のクライアントも覚悟しておかなければならない。
それでも、グローバル金融市場全体を複製する運用ポートフォリオ有れば、どんなショックが起こっても乗り越えられると楽観している。
ただし、投資家側が過剰反応を引き起こしてしまわないよう常日頃からショック時を想定したクライアントとのコミュニケーションを尽くしておくことは運用担当者や我々外部アドバイザーとして非常に大事な任務だと考えている。