2024.01.15
法人資産の運用を考える(62) 法人資産運用アドバイス業務の15年間を振り返って(6) 資産運用エキスパートの育成・確保、連続性の担保の重要性
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
小職の経営する会社は公益法人、学校法人などの法人資産運用アドバイス業務を開始して15年になる。
15年間で得た教訓についてシェアしたい。それぞれの法人の資産運用の参考にしていただけることがあれば幸いである。
弊社顧客のポートフォリオは、グローバル株式市場全体、グローバルREIT市場全体、グローバル債券市場全体の価格変動と利子配当利回りのそっくり複製と享受を目指すETF(上場投資信託)の組合せによって構成されている。
そして、そのようなポートフォリオを超長期間にわたり、一貫して堅持することを推奨・アドバイスしている。
さて、先日、某財団法人の運用委員会でのことである。
現在の資産運用担当者が
「今のところ、運用は非常に上手くいっているが、今後、市況の大暴落も有り得るだろう。
私の在任中であれば、他の役職員に対して、説明を尽くして、大暴落時も耐え、運用継続すること、理事会などを説得し続けられるだろう。
しかしながら、10年後、20年後は、私も既に退任しているだろう。
また、事務局スタッフや役員も全て交替しているに違いない。
正直、10年後、20年後については、私自身もこの財団の運用がどうなっているかは全く判らない(そこまでの責任は負えない)。」
彼の言わんとすることは、外部の資産運用コンサル会社の経営者としての小職も同じ問題意識を持っており、非常に共感できるポイントであった。
弊社の場合、創業して15年になるが、当初10年間ほどは、小職一人でクライントに対して資産運用アドバイスを提供していた。
クライアント側の担当者、役員は3,4回交替してゆくが、その間ずっと、小職は外部アドバイザーとして、法人の誰よりもクライアントらの運用内容とその意思決定の経緯について熟知しており、新任の担当者、役員に対して、口頭や文書によって、レクチャーしながらポートフォリオ運用の一貫継続に成功してきたという自負を持っていた。
しかしながら、前述の某財団法人の運用担当者も言った通り、法人自体は10年後、20年後、更にもっと長く、継続し、資産運用を続くけていかなくてはいけないことは容易に想像できる。
小職一人のアドバイス体制で、ずっとその任を果たしてゆくのは現実的ではないことに、やがて気が付いたのである。
そこで、数年前から社員を数名雇い、小職がやってきた業務の後任育成を始めたのである。
クライアント法人の組織を熟知し、歴代の資産運用とその意思決定の経緯が頭に入ったうえで、更に、市況の不調時(大暴落)を耐え、そこから回復期・好調時を迎え、クライアント法人と喜びを分かち合い、投資アドバイス業務に自信が持てるまでになるには、恐らく、10年以上は要するとみている。
しかしながら、それぐらいの手間と時間とコストをかけないで、クライアント法人のポートフォリオ運用の一貫性・継続性は担保できないと考えて居る。
そしてまた、弊社が取り組んでいるこの課題は、先の某財団法人をのみならず、資産運用を継続しないといけない全ての法人が同様に抱える課題だと考えて居る。