2020.01.09
学校法人資産の運用を考える(8) 法人を取り巻く制約条件と、資産運用との整合(3) 投資アドバイス業とフィデュシャリー・デューティー(FD)
学校法人の資産運用を考える粟津 久乃
50年前は法人資産運用の手段として預貯金と国債ぐらいしか存在しませんでした。それが、1980年代、金融商品の種類はどんどん増え続け始めました。やがて、1990年代後半、本邦金利の低下に伴い、為替・株価・金利など世の中の変動・変化について、その時々の「当てっこ」を運用担当者に求め続ける業務へと完全に変質してしまったのです。これが今日までの歴史であります。
預貯金と国債ぐらいであれば普通の運用担当者でもマネジメントできます。ところが、今日では、「どの金融商品を買うか」「いつ買うか」「買った後どのように管理するか」ということまで法人側が責任を持たなければなりません。そのような情報収集・判断・管理の業務を普通の運用担当者だけで「do it yourself流」に完結させることは段々困難になってきています。つまり、証券会社など外部からの情報提供・提案を参考にせざるを得ないのです。
しかしながら、ここに学校法人資産運用を取り巻く動かしがたい制約条件の一つが存在します。法人側はこれに十分留意していく必要があります。弊社の『新しい公益法人・一般法人の資産運用』で詳しく触れておりますが、金融ビジネス(銀行・証券会社・コンサル・運用会社など全て)は投資家が負担するコスト(手数料・管理料)の上に成り立っているという事実であります。だから、金融ビジネス側は往々にして彼らの収益がなるべく多くなるように、投資家を誘導するバイアスがかかります。投資家側の高コスト負担を正当化できるように、シンプルなものより複雑なもの、流動性の高いものより、低いもの、公で価格競争原理の働くものより、彼らの独自性・専売制の強いもの、更に彼らの専門性やリサーチ力をアピールできる商品やスキームに投資家を誘導したがる傾向があります。しかも、金融の統計によれば、高コストの商品やスキームは投資家側の高いリターンとは一致しません。それどころか、高コストは確実に投資家利益を損ない続け、その多くが、長期的にはシンプルで低コストの商品やスキームでの運用さえも下回るという実証研究の結果も沢山存在するのです。
昨今、金融庁が各金融機関に指導しているフィデュシャリー・デューティー(FD受託者責任)には、上記の背景が存在しています。法人に対する投資アドバイス業がFDをクリアするためには、
(1)アドバイザーの質(手数料・管理料収入や会社の人事評価を全く意識しないで良いとしたら、投資家の為に、どのようなアドバイスができるか?)
(2)投資家負担コストの妥当性(投資家の利益とバランスするか?高すぎないか?投資家の利益を損なわないか?)
(3)上記(1)(2)の要件を満たした上での持続可能性(顧客へ継続サービスが可能か?低収益=投資家への手数料等が低率でも事業が維持可能か?)
が求められるでしょう。
しかしながら(1)(2)(3)の全部をクリアする投資アドバイスを提供する会社と出会うことは、投資家が考えているほど簡単ではないのです。そもそも(1)の、「手数料・管理料収入や会社の人事評価を全く意識しないで良いとしたら、投資家の為に、どんなアドバイスができるでしょうか?」という業務の核心さえも、今までに一度も、真剣に向き合い、行動したことの無い人材が、未だ業界の大多数を占めているように思われます。そして、特に、このことが、投資家に対して果たすべきアドバイス・サービスの今後の責務を考えた場合の、一番の危惧でもあります。
預貯金と国債ぐらいであれば普通の運用担当者でもマネジメントできます。ところが、今日では、「どの金融商品を買うか」「いつ買うか」「買った後どのように管理するか」ということまで法人側が責任を持たなければなりません。そのような情報収集・判断・管理の業務を普通の運用担当者だけで「do it yourself流」に完結させることは段々困難になってきています。つまり、証券会社など外部からの情報提供・提案を参考にせざるを得ないのです。
しかしながら、ここに学校法人資産運用を取り巻く動かしがたい制約条件の一つが存在します。法人側はこれに十分留意していく必要があります。弊社の『新しい公益法人・一般法人の資産運用』で詳しく触れておりますが、金融ビジネス(銀行・証券会社・コンサル・運用会社など全て)は投資家が負担するコスト(手数料・管理料)の上に成り立っているという事実であります。だから、金融ビジネス側は往々にして彼らの収益がなるべく多くなるように、投資家を誘導するバイアスがかかります。投資家側の高コスト負担を正当化できるように、シンプルなものより複雑なもの、流動性の高いものより、低いもの、公で価格競争原理の働くものより、彼らの独自性・専売制の強いもの、更に彼らの専門性やリサーチ力をアピールできる商品やスキームに投資家を誘導したがる傾向があります。しかも、金融の統計によれば、高コストの商品やスキームは投資家側の高いリターンとは一致しません。それどころか、高コストは確実に投資家利益を損ない続け、その多くが、長期的にはシンプルで低コストの商品やスキームでの運用さえも下回るという実証研究の結果も沢山存在するのです。
昨今、金融庁が各金融機関に指導しているフィデュシャリー・デューティー(FD受託者責任)には、上記の背景が存在しています。法人に対する投資アドバイス業がFDをクリアするためには、
(1)アドバイザーの質(手数料・管理料収入や会社の人事評価を全く意識しないで良いとしたら、投資家の為に、どのようなアドバイスができるか?)
(2)投資家負担コストの妥当性(投資家の利益とバランスするか?高すぎないか?投資家の利益を損なわないか?)
(3)上記(1)(2)の要件を満たした上での持続可能性(顧客へ継続サービスが可能か?低収益=投資家への手数料等が低率でも事業が維持可能か?)
が求められるでしょう。
しかしながら(1)(2)(3)の全部をクリアする投資アドバイスを提供する会社と出会うことは、投資家が考えているほど簡単ではないのです。そもそも(1)の、「手数料・管理料収入や会社の人事評価を全く意識しないで良いとしたら、投資家の為に、どんなアドバイスができるでしょうか?」という業務の核心さえも、今までに一度も、真剣に向き合い、行動したことの無い人材が、未だ業界の大多数を占めているように思われます。そして、特に、このことが、投資家に対して果たすべきアドバイス・サービスの今後の責務を考えた場合の、一番の危惧でもあります。