2020.03.14
学校法人資産の運用を考える(10) 番外編:パニック時における資産運用チェック(2) 運用収入は安定的か? 運用元本の落ち込みは一時的か?
学校法人の資産運用を考える粟津 久乃
目先の世界は先の見えない嵐の真っただ中です。しかしながら、前回のコラムで申し上げた通り、終わらないパニックもまた有りません。
5年後10年後、少し遠くを眺めた見た時には、また違う景色が開けているものではないでしょうか。以下、現在、感じている雑感です。最後のチェック項目と併せて、学校法人の皆様の現状把握のお役に立つのではないかと考えます。
今、一番危険なのは、流動性の無い資産(市場価格で取引されない資産)に莫大な資金を投入している投資家や、更にそれらの元手を他人資本や借り入れに依存している投資家、です。これは、売ろうとしても売れませんし、やがては後ろ盾だった他人資本や借り入れが逃げ出し始め、ついには、破裂してしまいます。 まだ表面化していない事案もいっぱい有るかもしれませんが、日本バブルの土地担保融資、LTCM、サブプライム、リーマンブラザーズなどもそうですし、最近ではVファンド、CLOなども似た構造かもしれません、、、いつも最後は金融危機で終わりを迎えました。 今回、そこまで至るかどうかは誰にも判りませんが、、、
一方、株式市場、REIT市場、債券市場に、自己資金で、投資している投資家は、流動性が有る資産のおかげで(せいで?)、 現在みたいな投資環境時は、価格の下落に真っ先に直面します(常に値がついているということは、どんなに下げていても、かなりの数の買い手が必ず現れる資産であることの裏返しなのですが)。 下落してゆく資産を見るのは、気持ちの良いものでは無いし、暫しの忍耐が必要かもしれません。 しかしながら、「ちゃんとしたやり方」で投資しているのであれば、破裂することもないし、市場はいずれ戻ってくる可能性が高いと思われます。 最期に、前回のコラムでも列挙した、各法人が実施する資産運用が以下のチェック項目(1)(2)をクリアするか、再検証してみて欲しいと思います。 (チェック1)今後、パニックが続いたとしても、運用収入は安定的か? 株式やREITの下落、金利の低下、円高などが続いたとしても、年度事業のサポートする運用収入が比較的安定していれば、パニックの嵐が過ぎ去るまで、やりすごすことができます。 ただし、今のところ運用収入に影響が無くても、パニックが長引いた場合、徐々に業績
悪化 ⇒ 減配や格下げ・デフォルト、 あるいは金利低下 ⇒ 再投資利回りの低下、などの影響を大きく受ける資産内容・偏りになっていないかのチェックは必須になります。 (チェック2)パニックによる、資産価格の下落は一時的なものであると、客観的に言えるか? パニックの嵐が過ぎ去れば、復元・回復する性格の“一時的な落ち込み”であれば、法人の中長期的な事業基盤は、依然として守られていると言えます。 ただし、それが単に市況に連動した一時的な落ち込みなのか、それとも個々の株式やREITの業績悪化あるいは個々のファンドマネージャーの運用失敗による“復元しない恐れのある落ち込み”なのか、では大きく異なることには留意が必要です。 後者であれば、中長期的な事業基盤は毀損してしまうことになります。 また、円安などの為替変動のみに期待したクーポン・価格の回復は、個々の株式やREITの場合と同様な、“運”を必要とすることにも注意です。 以上の(1)(2)のチェック項目について概ね「イエス」の資産運用を実施しているのであれば、どんなパニックが来ようとも、嵐が過ぎ去るのを待つだけと言えます。 (更に、一時的に下落している資産を買い増して「災い転じて福となす」ことも検討に値するでしょう)。 一方、(1)(2)のいずれか、あるいは両方が「ノー」の法人には、 今後の改善策を考える為の問題点を全てあぶりだしてくれるのが、今の『パニック』という機会なのだと前向きに捉えて欲しいです。 以上、どうぞよろしくお願い致します。
以上
5年後10年後、少し遠くを眺めた見た時には、また違う景色が開けているものではないでしょうか。以下、現在、感じている雑感です。最後のチェック項目と併せて、学校法人の皆様の現状把握のお役に立つのではないかと考えます。
今、一番危険なのは、流動性の無い資産(市場価格で取引されない資産)に莫大な資金を投入している投資家や、更にそれらの元手を他人資本や借り入れに依存している投資家、です。これは、売ろうとしても売れませんし、やがては後ろ盾だった他人資本や借り入れが逃げ出し始め、ついには、破裂してしまいます。 まだ表面化していない事案もいっぱい有るかもしれませんが、日本バブルの土地担保融資、LTCM、サブプライム、リーマンブラザーズなどもそうですし、最近ではVファンド、CLOなども似た構造かもしれません、、、いつも最後は金融危機で終わりを迎えました。 今回、そこまで至るかどうかは誰にも判りませんが、、、
一方、株式市場、REIT市場、債券市場に、自己資金で、投資している投資家は、流動性が有る資産のおかげで(せいで?)、 現在みたいな投資環境時は、価格の下落に真っ先に直面します(常に値がついているということは、どんなに下げていても、かなりの数の買い手が必ず現れる資産であることの裏返しなのですが)。 下落してゆく資産を見るのは、気持ちの良いものでは無いし、暫しの忍耐が必要かもしれません。 しかしながら、「ちゃんとしたやり方」で投資しているのであれば、破裂することもないし、市場はいずれ戻ってくる可能性が高いと思われます。 最期に、前回のコラムでも列挙した、各法人が実施する資産運用が以下のチェック項目(1)(2)をクリアするか、再検証してみて欲しいと思います。 (チェック1)今後、パニックが続いたとしても、運用収入は安定的か? 株式やREITの下落、金利の低下、円高などが続いたとしても、年度事業のサポートする運用収入が比較的安定していれば、パニックの嵐が過ぎ去るまで、やりすごすことができます。 ただし、今のところ運用収入に影響が無くても、パニックが長引いた場合、徐々に業績
悪化 ⇒ 減配や格下げ・デフォルト、 あるいは金利低下 ⇒ 再投資利回りの低下、などの影響を大きく受ける資産内容・偏りになっていないかのチェックは必須になります。 (チェック2)パニックによる、資産価格の下落は一時的なものであると、客観的に言えるか? パニックの嵐が過ぎ去れば、復元・回復する性格の“一時的な落ち込み”であれば、法人の中長期的な事業基盤は、依然として守られていると言えます。 ただし、それが単に市況に連動した一時的な落ち込みなのか、それとも個々の株式やREITの業績悪化あるいは個々のファンドマネージャーの運用失敗による“復元しない恐れのある落ち込み”なのか、では大きく異なることには留意が必要です。 後者であれば、中長期的な事業基盤は毀損してしまうことになります。 また、円安などの為替変動のみに期待したクーポン・価格の回復は、個々の株式やREITの場合と同様な、“運”を必要とすることにも注意です。 以上の(1)(2)のチェック項目について概ね「イエス」の資産運用を実施しているのであれば、どんなパニックが来ようとも、嵐が過ぎ去るのを待つだけと言えます。 (更に、一時的に下落している資産を買い増して「災い転じて福となす」ことも検討に値するでしょう)。 一方、(1)(2)のいずれか、あるいは両方が「ノー」の法人には、 今後の改善策を考える為の問題点を全てあぶりだしてくれるのが、今の『パニック』という機会なのだと前向きに捉えて欲しいです。 以上、どうぞよろしくお願い致します。
以上