コラム

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2024.10.25

法人資産の運用を考える(71) インフレと株式投資(株式インデックス≒株式市場への投資)(2) ~株式市場の存続とインフレを凌駕する長期リターンについての常識的な理解~

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

前回は、企業とその持ち分を保有する株主とは運命共同体(損する時も、そうで無い時も利益相反が起こりにくい=企業だけが得をして、その株式保有者が一方的に損をすることが起こりにくい)の構造、関係であることを述べた(一方、企業とその債券保有者との間では利益相反が生じやすい)

つまり、もしも企業が強烈なインフレの環境に見舞われて、原材料やサービスの仕入価格は跳ね上がったとしても、社員の人件費も引き上げないと人材確保が難しくなったとしても、費用抑制の為に一部社員のリストラを断行しなければいけなくなっても、また、売り上げの減少を食い止めるために販売価格の値上げ、新しい販路開拓、商品・サービスの開発にも取り組んででも、利益を確保できなくなれば、そもそも企業は存続できなくなるのである

同時に、このような企業利益はその株主への配当+内部留保の源泉、すなわち株主リターンの源泉とも完全に一致する。

このような企業利益≒株主リターンの源泉という構造は、インフレ時のみならず、デフレ、金融危機、経済ショックなど如何なる経済環境においても、常に不変である。

さて、インフレと株式投資(株式インデックス≒株式市場への投資)について

1984年12月~2023年3月の本邦物価上昇率は累積で28%であるが

配当金込み増加率は

先進国株式市場インデックス:約2390%

新興国株式市場インデックス:約2360%

インフレを圧倒的に凌駕している

また、今もしも株式市場が半値以下まで下落したとしても、それらは依然インフレを遥かに凌駕する水準を誇る。

これは、インフレだけでなく、デフレ、金融危機、経済ショックなどあらゆる厳しい経済環境を経てもなお、株式市場≒経済全体で見た場合には、企業は生き延び、企業利益(≒株主リターンの源泉)を蓄積し続けることに成功してきた証に他ならない。

もちろん、上記の下線部のような厳しい経済・経営環境の時には、全体でみても、企業利益の落ち込み、減配が避けられないことも幾度も有った。また、厳しい経済・経営環境に耐えられず(生き残ることができずに)、淘汰されていった個々の企業も数多い。

しかしながら、インフレ(デフレ、金融危機、経済ショックなどあらゆる厳しい経済環境を含む)を生き延びた企業の総和で考えた場合、確かに、企業は利益の蓄積に成功しており、株式市場の長期リターンはそれを実証していると言える。

逆に、もしも、全体として、企業活動がインフレなどに打ち負かされているのであれば、常識的にも、株式市場の長期リターンは今よりも遥かに低いものになっていたことだろう。

また、株式市場は縮小を続け、その存続・持続性さえ危ぶまれる事態に陥っていることだろう。

このように、インフレを凌駕する株式市場の高いリターンは、投資家が、預金や債券よりも高いリスク=良くも悪くも企業(株式市場)と運命を共にするというリスクを引き受けたこと、そして全体として企業(株式市場)はそれに対して長期的に報い続けていること、というトレードオフの関係である理解できのである。

以上、円安や本邦物価上昇などへの長期的な対応策の理解、検討のヒントにしていただければ幸いである。

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