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2024.11.25

【財団法人・学校法人のための資産運用入門(2)】アセットオーナープリンシプルの公表と非営利法人の資産運用②

基礎シリーズ梅本 亜南

このシリーズでは、複数回にわたってアセットオーナー・プリンシプル(以降、AOP)についてお伝えしてまいります。とりわけ、学校法人、財団法人、社団法人等の非営利の法人投資家(以降、非営利法人)の資産運用の観点から見たAOPの意義や、その重要性に触れたいと思います。   弊社では、創業以来一貫して、このAOPのような考え方が、非営利法人の資産運用の標準であると考え、これまでお客様に対して、アドバイスを行ってまいりました。   今回は、5つの原則のうち1つめの原則1について触れていきたいと思います。  

「アセットオーナー・プリンシプル」原則1

 
原則1 アセットオーナーは、受益者の最善の利益を勘案し、何のために運用を行うのかという運用目的を定め、適切な手続に基づく意思決定の下、経済・金融環境等を踏まえつつ、運用目的に合った運用目標及び運用方針を定めるべきである。また、これらは状況変化に応じて適切に見直すべきである。 補充原則 1-1.アセットオーナーは、運用により利益を享受させるべき受益者等が誰か、何のために運用するのかといった運用目的について明確にし、必要に応じて見直すべきである。 1-2.アセットオーナーは、運用目的を達成するために、運用資金の性格、自らの能力・規模、長期的な経済・金融環境等を踏まえ、具体的に目指すリターンや許容できるリスク等といった運用目標を定めるべきである。また、運用目標を達成するために、経済・金融環境等を踏まえ、具体的な資産構成割合(基本ポートフォリオ)、リスクに関する考え方や運用対象資産の範囲等の運用方針を定めるべきである。 1-3.アセットオーナーは、運用目標・運用方針を定めるに当たっては、適切な手続に基づき、十分な専門的知見に基づき意思決定を行うことができる組織体制の下で行うべきである。 1-4.アセットオーナーは、定められた運用目的・運用目標を踏まえ、自らやステークホルダー等の状況や経済・金融環境等の変化に応じた運用方針となっているかを定期的に検証し、必要に応じて適切に見直すべきである。

金融庁『「アセットオーナー・プリンシプル」の策定について』より

 

原則1のポイント

この原則1のポイントは、大きく以下の4つであると考えています。
  • 法人としての運用目的の明確化
  • 方針としての適切な手続と、専門的知見に基づく意思決定
  • 運用目的に沿った目標(リスク・リターン)と方針(配分比率、リスク管理、投資対象資産等)の策定
  • 策定した運用目標・方針の見直し
 

運用目的の明確化

AOPは、各法人が「何のために運用しているか」を明確にすることを求めています。 利益獲得を目指す営利法人とは異なり、経済的優遇を受ける代わりに公益に資する形での運用収益活用を求められる非営利法人は、営利法人に増して、「何のために資金の運用を行っているか」という点を明確にする必要があると言えるかもしれません。 多くの法人では、運用収益と事業等の紐づけがある中で、目的が全く意識されないというケースは少ないでしょう。  

適切な手続と専門的知見に基づく意思決定

AOPは、法人の資産運用において、適切な手続と専門的な知見に基づく意思決定を求めています。 適切な手続は、意思決定のプロセスがあらかじめ明確で、事後的にも説明可能な形になっていることが重要です。担当者の主観による独断や、ブラックボックス化された機構の中で行われるプロセスは、適切とは言えないかもしれません。どのような主体が、どのようなプロセスを踏んで決定されるのか。あるいは、どのような議論が行われ、どのような決定がなされたのか、求められれば第三者に対しても説明が可能な形で明文化されているのが望ましいと言えます。 加えて、意思決定をする際に専門的な知見を交えることは、意思決定の質を高めるという意味でも、意思決定の客観性を担保する意味でも重要な点であると考えています。ただし、法人の運用目的のために機能するべき専門家がその役割を超えてしまうことによって、運用内容などが法人側の理解の範疇から離れていくようなこと(運用の過度な高度化等)がないよう、注意を払わなくてはなりません。  

運用目標・方針の策定

AOPでは、運用目的に沿った形で、目標とするリスク・リターンと、それを支える資産配分比率、リスク管理、投資対象資産等の手段を策定することが望ましいと考えられています。運用している目的の達成指標を定量的に明確化することと言えるかもしれません。 これらを明確にする作業は、組織として維持・管理の困難な場当たり的な運用や、先述のようなブラックボックス化された運用を避けるという意味で重要だと考えています。 あるいは、取るべきではないリスクを負っていたり、逆に消極的になりすぎて運用目的を遂げることができないような運用姿勢になっていたりしていないか等を、法人として確認する機会にもなります。  

運用目標・方針の見直し

これまで述べてきたような内容は、きちんと明確にされ、文書化されることはもちろん、一度策定されたのちも定期的に見直される必要があります。 経済・金融環境等が変化すれば、運用目標達成に向けた方針を修正する必要が生じる可能性があります。もしくは、時代とともに法人の運用目的が変化すれば、それに伴って運用目的を変更しなくてはならなくなるかもしれません。 策定した目標や方針は、作りっぱなしにせず定期的に関係者の目にさらし、必要に応じて更新していくことで、法人一体で事業の目的達成に向けて資産運用を活用していくことができると考えています。

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