2025.03.15
法人資産の運用を考える(76) 今後の運用担当者と法人役員が理解、取得するべき運用知識と運用スキル(3) 世界の金融市場を組み合わせた(基本)ポートフォリオのマネジメント・スキル
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
著者は、今後の運用担当者と法人役員が理解、取得するべき運用知識と運用スキルとは
(1)グローバルの様々な金融市場全体に分散投資するという普遍的、本源的な運用知識
(2)それらの金融市場を組み合わせた(基本)ポートフォリオのマネジメント・スキル
というたった2点に絞り込めると考えている。
今回は(2)世界の金融市場を組み合わせた(基本)ポートフォリオのマネジメント・スキルとは何か?
その概要について触れたい(詳細は、拙著『非営利法人の為の資産運用入門』の第6章~第8章を参照されたい)。
(基本)ポートフォリオとは、資産配分比率のことである(世界の株式市場、REIT(不動産)市場、各種債券市場に、それぞれ何%ずつ配分するかを組織として定めること)。
運用担当者と法人役員が理解、取得するべき運用スキルとは、ただ一つ、このような資産配分比率を決定して、必要に応じて微調整、メンテナンスしてゆくことである。
世界の株式市場、REIT(不動産)市場、各種債券市場が、どのように機能してきたか、どのような特徴を備えているかについて、過去から現在までの金融市場のデータなどから学び、法人の現在から将来にわたる事業目的に合致するように(現在の必要インカム収入と将来的なインフレリスクとに備えて)、それらを組み合わせた(基本)ポートフォリオを構築する。そして、事業・経済環境などの変化に合わせて、(基本)ポートフォリオを微調整、メンテナンスを続けるということだけに運用管理業務を集中できるのである。
このような世界の株式市場、REIT(不動産)市場、各種債券市場と、それらを組み合わせた(基本)ポートフォリオという、マクロ的な視点から資産運用業務を理解、管理することは、運用担当者と法人役員にとっての運用管理業務に大きな変革をもたらす。
第一に、金融市場全体というある意味で普遍的、マクロ的な投資対象のみで(基本)ポートフォリオが構成されるので、個々の資産の精査、継続可能性についてのチェックの必要が無くなる(一方、個別銘柄の債券、REIT(不動産)、株式で運用する場合や、銘柄選択や投資タイミングを外部に委託するアクティブ運用ファンドやオルタナティブファンドで運用する場合、個別の銘柄やファンドについて精査、継続可能性についてミクロ的なチェックを怠ってはいけないという責任が法人側に生じる)。
第二に、(基本)ポートフォリオ=世界の株式市場、REIT(不動産)市場、各種債券市場にそれぞれ何%ずつ配分するか、という全体最適、マクロ的な視点からの意思決定だけに運用管理業務を集中することができる(一方、前述のとおり、個別銘柄投資やアクティブ運用ファンドやオルタナティブファンドの場合は、更に、個々の投資対象についてのミクロ的な精査、チェック業務も追加しなくてはいけない)。
このような(基本)ポートフォリオ(=世界の株式市場、REIT(不動産)市場、各種債券市場にそれぞれ何%ずつ配分するか)が決まれば、各市場を複製し、運用コストが廉価なETF(上場投資信託)を活用すれば、金融市場平均並みのパフォーマンスと利子配当利回りとを実際の法人資産運用でそのまま再現することは非常に簡単である(詳細は、拙著『非営利法人の為の資産運用入門』の第5章を参照されたい)。