コラム

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2018.10.30

法人資産の運用を考える(1) 『法人資産運用の二極化』の真相

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

超低金利が続く中、法人の資産運用においても『二極化』が進んでいると言われている。現在の環境下でも頑なに預金・日本国債やその他の公債を保有し続ける法人(管理型法人と呼ぶ)と、少しでも高い利回りを求めて既に社債、仕組債、外債、株式などへと投資を広げる法人(運用型法人と呼ぶ)との『二極化』である。拙著『新しい公益法人・一般法人の資産運用』の法人に対する資産資産運用アンケートの分析結果からも、このような『二極化』の現象がみてとれる。


しかしながら近年、これら預金・日本国債やその他の公債を保有し続ける管理型法人の資産運用の問題への関心の高さに現場で驚かされることが少なくない。公益法人協会で開催される資産運用セミナーへの参加法人や弊社への相談・照会の状況からも、それは顕著である。


これらの管理型法人の多くは、長らく日本国債等で運用して来たが、国債が償還を迎えたのち、再投資先に困り、資金が預貯金に滞留してしまっている、という似通った状況に置かれている。意外にも、最近このような法人から、今後は『もっと超長期の国債での運用か、ポートフォリオ運用などその他の運用選択肢かで研究している、迷っている』、『財産の一部で株式を投資対象とするETF(上場投資信託)の取得を検討している』、『従来の保守的な運用を続ける部分、ポートフォリオ運用など一定のリスクを取る部分、に分けての運用を役員に提案してみようと考えている』等々の質問、相談が多いことに驚かされるのである。


また、これらの法人はもともとリスク回避思考が非常に強い。それゆえ、他の運用型法人(社債、仕組債、外債、株式などへと既に投資を広げた法人)に比べて、資産運用やそのリスクに対して合理的な裏付け・ロジックをより重視する傾向が強いように思われる。言い換えれば、運用型法人の方は、リスキーな個別銘柄運用をなかなか卒業できない。なぜなら、歴代あるいは現在の運用担当者などが個別の社債、仕組債、外債、株式、その他金融商品を彼らの裁量で選別する運用を続けて来たので、そのスタイルを軌道修正(あるいは自己否定)するのは難しいからである。その一方、合理的な裏付け・ロジックを重視し、個別銘柄運用の“手垢”に染まったことのない管理型法人の方は、よりスムーズに、ポートフォリオ運用など新しい資産運用スタイルに移行してゆく可能性も見えてきたと言える。


拙著『新しい公益法人・一般法人の資産運用』の資産資産運用アンケートの分析結果によれば、超保守的な管理型法人は全体の約1/3の割合を占める。今後は、このような管理型法人の“巻き返し”も大いに期待されるのである。

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