2019.01.30
法人資産の運用を考える(4) 不確実性が伴う資産運用と、確実性が求められる法人事業とのバランス
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
2018年12月末現在、株式市場が年末にかけて、こんなにも乱高下しながら、下げ続づけると誰が予想していただろうか? また、米国はじめ世界的にも金利が上昇基調を続けた後、一転、急低下しはじめるとは誰が予想しただろうか? さて、2019年は一体どんな動きをするだろう? それは、神のみぞ知る世界である。どんな運用/金融のプロであろうと、何人も将来を的中させ続けることはできない。まず、人間の予想や期待など裏切られ続けるのが、資産運用の世界における常識だと考えた方が良い。
しかしながら、資産運用の成果を予算化し、事業計画や決算を見据え、それらを達成してゆくことを求められる状況では事情が異なる。不確実性が必然的に伴う資産運用と確実性が求められる法人事業という相矛盾する2つの事象をバランスさせる(あるいは、妥協点、落とし所をさぐる)ことが法人資産の運用の命題なのである。
その為に一番に考えなくてはいけないこととは何か? 出発点である法人の資産運用が不確実性の高い要素に依存していれば、結果としての事業や決算の不確実性が高くなるのは自明である。だとすれば、資産運用における不確実性を(ゼロにはできないが)、極力、軽減することを心掛けながら行えば、事業や決算の不確実性も抑制できそうなことは直ぐに理解できよう。
資産運用を構築してゆく2大要素として、(1)個別銘柄・偏った業種/資産か ⇔ 幅広い分散投資か(例えば、金融市場全体への分散投資か)、(2)キャピタルゲイン・資産価格の如何に依存しているか ⇔ 利子配当などのインカム収入か、とういう切り口でとらえることが出来る。(1)では個別銘柄・偏った業種/資産であるほど、(2)ではキャピタルゲイン・資産価格の如何に依存しているほど、不確実性がより高くなることは常識を働かせればすぐに判る。
だから、拙著『新しい公益法人・一般法人の資産運用』でのA法人の運用事例でも紹介しているように、仕組債など、為替や株価などの価格変動を『利息』転化しているに過ぎない金融商品に傾倒したり、個別銘柄での債券、REIT、株式(母体企業株式を含む)、外債などの運用に依存しすぎたりする『旧来型の資産運用』では、アウトプットとしての事業や決算が比較的大きな不確実性を帯びてしまうのは当然なのである。
一方、消去法的な選択かもしれないが、残るのは、拙著で紹介しているB法人の運用事例のような、①幅広い分散投資と②利子配当などのインカム収入という両方の要素をクリアして構築された資産運用スタイルなのである。すなわち、不確実性が必然的に伴う資産運用と確実性が求められる法人事業という相矛盾する2つの事象を辛うじてバランスさせ得るのは(あるいは、妥協点、落とし所をさぐり得るのは)、このような『新しい資産運用モデル』しか今のところ見当たらないのである。
2019年に、もしも万が一、株式が更に下落したり、10%~20%も円高になったり、金利が低下したり(あるいは上昇したり)、景気後退で信用リスクや減配リスクが高まったりすると、結果としての事業や決算にも深刻な影響を被り得ると薄々気付いていらっしゃる法人があれば、拙著『新しい公益法人・一般法人の資産運用』を是非一度、お手にとってみられることをお薦めする。