2020.01.30
法人資産の運用を考える(16) 核とならない資産(3) 株式・REIT(個別銘柄 母体企業株式を含む)
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
やってみないと最終的に判らない、価値が消滅あるいは、大きく減価したまま回復しないリスクを伴う資産は、「核とならない資産」として、拙著『新しい公益法人・一般法人の資産運用』において列挙、詳しく解説している。前回は仕組債(為替、クレジット、株価、その他インデックスを参照するデリバティブを組み入れた債券)について解説した。今回は、株式・REIT(個別銘柄 母体企業株式を含む)について指摘したい。
最初に断らないといけないが、公益法人や学校法人が長期的な財産として株式やREITを保有することを全否定するつもりは全くない。それどころか法人財産のポートフォリオの一部として、株式やREITを適切に保有することは理にもかなっており、推奨に値すると考える。なぜなら、長期でみれば、それらは法人の財産規模を膨らませ、かつ、その配当水準自体も増大させてゆくことが期待できるからである。
このような効果は、長期的なインフレに打ち勝ち、(公益)事業を維持発展させてゆくべき主体にとって欠かせない性質なのである。一方で、債券にはこのような性質は期待できない。債券利息と償還金の成長は逆立ちしても期待できないのである。
特に株式は『企業=生産手段』を保有するに等しい。企業というものは、生産活動を拡大すると共に、そこからの配当も増やしてゆくことを使命としていることは、常識的にも理解できよう。
しかしながらである、このような株式・REITに投資する方法を間違えていると、これらの特筆すべき長期的な恩恵にも預かれないのである。単純に言えば、超長期の“持続性”か伴わない、あるいは伴わない恐れのあるやり方で株式・REITを保有したのでは、かえってアダとなりかねないのである。個別銘柄で株式(母体企業株式を含む)やREITを保有することはこれに該当する。つまり、個別銘柄では価値が消滅あるいは、大きく減価したまま回復しない、配当自体も激減・消滅してしまうリスクを伴うので、法人の資産運用の『核』にはできないのである。
普通の債券運用では利子補給が難しくなった昨今では、株式やREITの相対的な配当利回りの高さから、法人資産において運用担当らが進んで個別銘柄をピックアップして取得、保有を始めるケースが増えているようである。ピックアップした時点では“高配当銘柄”“優良銘柄”などと言われていても、その評価、業績自体が時代と共にどんどん変わってゆく。それらの変化を常にモニターして、必要であれば、入れ替え、ロスカットもしなければいけないのが適切な個別銘柄の取り扱いである。法人の一担当者にそんなファンドマネージャーまがいの仕事ができるのだろうか?(しかも、法人の役職員はどんどん交替してゆく中で)
また、母体企業株式も個別銘柄であることにおいては同じリスクを抱える。いつくかの企業系財団の“浮沈”は、その法人の(公益)事業遂行の意思とは関係なく、どこが母体企業か
(どの企業の株式持っているか)によって、運命づけられているのである。
以上