2020.03.30
法人資産の運用を考える(18) 番外編:パニック時における資産運用チェック(1) 運用収入は安定的か? 運用元本の落ち込みは一時的か?
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
3月初旬の今、世界的なコロナウィルスの感染拡大 ⇒ 経済・企業活動への影響懸念から、世界的に株式、REIT、債券金利、為替が大きく動き始めている。前回までは、法人の『核とならない資産』について、列挙、解説してきたが、いったん中断して、パニック時の資産運用チェック項目について触れてみたい。
第1に、過去も将来も、資産運用には、必ずパニックは付いてまわる、切り離すことの出来ないものである。何人も、パニック時だけを都合よく避けて、資産運用を続けることは出来ない。甘んじるしかないのである(運用収入を年度事業のサポート、あるいは中長期的な事業基盤と位置付けている公益法人の場合は、特に、である)。今回のパニックのきっかけが、コロナウィルスだっただけの話であり、過去の記憶に新しいものでは、リーマンショック、東日本大震災、ギリシャショック・ユーロ危機など、様々なきっかけでパニックは繰り返されている。
第2に、誰にも予測できないことである。今回のコロナウィルスの感染拡大がどこで止まるか? 金融市場のパニックは何処まで行けば止まるか? などについて、プロ / アマ、評論家、メディアを含めて誰も判らない状況であることは、毎度のパニックでの共通点でもある。
第3に、いずれは終わることである。今回のパニックについても、予測できることは、いつかこの混乱も収束を迎えるであろうということである。おそらく、人類の滅亡や世界経済の終焉までには至らないのではないか、ということである。
次に、以上の前提で、各法人が実施する資産運用が以下のチェック項目をクリアするか、検証してみて欲しい。
(1) 今後、パニックが続いたとしても、運用収入は安定的か?
株式やREITの下落、金利の低下、円高などが続いたとしても、年度事業のサポートする運用収入が比較的安定していれば、パニックの嵐が過ぎ去るまで、やりすごすことができる。
ただし、今のところ運用収入に影響が無くても、パニックが長引いた場合、徐々に業績悪化⇒減配や格下げ・デフォルト、あるいは金利低下⇒再投資利回りの低下、などの影響を大きく受ける資産内容・偏りになっていないかのチェックも必須である。
(2) パニックによる、資産価格の下落は一時的なものであると、客観的に言えるか?
パニックの嵐が過ぎ去れば、復元・回復する性格の“一時的な落ち込み”であれば、法人の中長期的な事業基盤は、依然として守られていると言える。
ただし、それが単に市況に連動した一時的な落ち込みなのか、個々の株式やREITの業
績悪化あるいは個々のファンドマネージャーの運用失敗による“復元しない恐れのある落ち込み”なのか、では大きく異なる。後者であれば、中長期的な事業基盤は毀損してしまうことになる。また、円安などの為替変動のみに期待したクーポン・価格の回復は、個々の株式やREITの場合と同様な、“運”を必要とすることにも留意が必要。
以上の(1)(2)のチェック項目について概ね「イエス」であれば、どんなパニックが来ようとも、嵐が過ぎ去るのを待つだけである。
また、(1)(2)のいずれか、あるいは両方が「ノー」の法人には、今後の改善策を考える為の問題点を全てあぶりだしてくれるのが、今の『パニック』という機会なのだと捉えて欲しい。
以上