コラム

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2020.05.10

法人資産の運用を考える(20) 核とならない資産(5) アクティブな運用、アクティブ運用投信、ヘッジファンドなど(ファンドマネージャーなどの巧拙に賭ける運用)

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

やってみないと最終的に判らない、価値が消滅あるいは、大きく減価したまま回復しないリスクを伴う資産は、「核とならない資産」として、拙著『新しい公益法人・一般法人の資産運用』において列挙、詳しく解説している。前の回では、私募REIT、インフラファンド、未公開株ファンドなど(流動に乏しい資産、市場価格が無い資産)について指摘した。今回は、アクティブな運用、アクティブ運用投信、ヘッジファンドなど(ファンドマネージャーなどの巧拙に賭ける運用)を挙げたい。


2020年5月時点までのところでは、コロナ・パニックで一時、株式市場が平均で約▲30%、REIT(不動産)市場で約▲40%、その他国債を除く社債市場は約▲10%~▲20%も下落した。


しかしながら、市場平均価格が下落したとはいえ、何十~何千銘柄から構成される金融市場そのものが消えて、無くなってしまう訳では無い。金融市場全体でみた価格は、リーマンショック時も含めて、浮沈を繰り返しているが、最終的には回復・復元している。今回の価格下落も長い目で見れば、市況と共に底打ち、回復・復元する、一時的なものと考えられている。以上が、世界の主要な金融市場と市場平均利子利回り、配当利回りを複製するETF(上場投資信託)などを使ったパッシブ運用の場合の基本的な投資スタンスである。


一方、アクティブ運用(アクティブ運用投信、ヘッジファンドなど)のスタンスは上記とは異なる。何千~何万銘柄の全ての投資対象の中から一部の銘柄だけをピックアップ、切り取る。また、全ての(銘柄の)価格変動のから、一部銘柄の価格変動あるいは一時期だけの価格変動を切り取る。そのような“切り取り”を巧みに行うことで、単なるパッシブ運用よりもリスクを小さくしたり、リターンを高めたりすることを企てているのが、アクティブ運用である。そして、そのような“切り取り”の裁量、意思決定権を投資家が委ねているのが、ファンドマネージャーである(最近ではAIや特定の投資モデルが、生身の人間に変わって意思決定を任されることもある)。


このようなアクティブ運用の問題は、人間で在れ、機械で在れ、そのような“切り取り”作業が巧みに出来る場合もあれば、拙い結果になる場合もある。投資する前には誰にも判らない、やってみないと結果は分からないことである(しかも、統計データによれば、長期間にわたり成功し続けるアクティブ運用はほんの一握りとなる=人間や機械の投資戦略も未来永劫に効果的な訳ではなく、殆どが時代遅れ、陳腐化してしまうのだろう)。


さて、法人がアクティブ運用を管理・監督する上で厄介なのは、価格下落が「市況要因」


なのか、ファンドマネージャーなどの「失敗=見込み違い」なのか、判別するのが難しいことである。今般のコロナ時の下落がファンドマネージャーなどの「失敗=見込み違い」なのであれば、市況と共に回復・復元しない、あるいは回復・復元が大幅に遅れることになる。


ファンドマネージャーなどの「失敗=見込み違い」かどうか、主体的に管理・監督・判断できない法人、あるいは外部コンサルなどの説明を鵜吞みにせざるを得ない法人は、アクティブ運用を中核としてはいけない。ましてや、法人の運用担当者が個別の債券、REIT、株式を判断するアクティブ運用など、論外であることを肝に銘じられたい。


以上

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