2020.07.07
法人資産の運用を考える(21)ESG、SDGsその他、環境・社会・道徳・慈善的な要素などを前面に打ち出した投資商品
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
法人資産の運用を考える(21)
核とならない資産(6)
ESG、SDGsその他、環境・社会・道徳・慈善的な要素などを前面に打ち出した投資商品
やってみないと最終的に判らない、
価値が消滅あるいは、
大きく減価したまま回復しないリスクを伴う資産は、
「核とならない資産」として、拙著『新しい公益法人・一般法人の資産運用』において列挙、詳しく解説している。
前の回では、アクティブな運用、アクティブ運用投信、ヘッジファンドなど(ファンドマネージャーなどの巧拙に賭ける運用)について指摘した。今回は、ESG、SDGsその他、環境・社会・道徳・慈善的な要素などを前面に打ち出した投資商品を挙げたい。
ESG、SDGsその他、環境・社会・道徳・慈善的な要素などを前面に打ち出した投資商品
これらはアクティブな運用、アクティブ運用投信、ヘッジファンドなどと同じ構造的な問題を抱える。
つまり、全ての投資対象の中から一部の銘柄だけをピックアップ、切り取って投資するという根底の構造は同じなのである。
例えば、ESG投資では、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別して投資を行う。ESG評価の高い企業は事業の社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性を持つと考えられている。
公的年金基金などは、企業が引き起こす事故や不正・不祥事のリスク管理の観点からESGを捉え、中長期的なフリーキャッシュフロー創出力など企業価値向上が期待できる企業を見極めることで、投資リスクの軽減に努めているといわれる。このような理念・理想については、皆、異論も無いであろう。
問題は、ESG評価の高い企業を、誰が、どのような基準で選別できるのか? 果たしてそのような選別は、有効かつ持続可能なのか? という現実的な問題を抱えているということである。掲げている理念・理想については異論が無いが、具体的な実施方法については、未だ実験的な要素が強い。企業の選別を行うファンドマネージャー、数理モデルなどや、それらの有効性と持続性を信じて、やってみないと最終的に判らない。『賭け』の要素が強い手法であることは否めない。そのことを予め理解した上で資金を投じるのであれば問題は無いのだが。
例示したESG投資に限らず、SDGsその他、環境・社会・道徳・慈善的な要素などを前面に打ち出した投資商品は最近の流行と言えるかもしれない。運用業界やファンドマネージャーの中には、このような新しい投資アイデア・手法の可能性を信じ、日々、技術的な探求と改善に真摯に取り組む者たちも存在している。彼らの存在意義まで否定、疑いの目で見るつもりは毛頭ない。
しかしながら、このような新しい投資アイデアが掲げる理念・理想は、間違いなく、投資家サイドのプライドや自尊心、責任感をくすぐるものである。そして、金融業界サイド(運用会社、証券会社、年金コンサルなど)もそのことをよく知っているのである。
なんとか、この流行を彼らの新しいビジネス・取引に利用したいと考えている業者も少なくない。だから、投資家サイドとしては、盲目的に彼らのビジネスの為の提案に乗ってしまうのではなく、『実験的なものであること』『賭けの要素が強いものであること』を十分に事前にわきまえたうえで、対応されることをお薦めする。
特に、『技術・制度的に確立されたものである=主要な公的投資家では採用済みあるいは検討中など』、『優れた運用成績が期待できる』などと売り込んでくる業者には、決して耳を傾けてはならない。
以上