2020.07.14
学校法人資産の運用を考える(12) 私学経営を発展させる① [私学経営をトータルで考える ~自己資金は温存、膨らませてゆくという選択肢(1)~]
学校法人の資産運用を考える粟津 久乃
学校法人を経営する上で、如何に設備や教師陣を集め、魅力的な学校組織を作り上げるかは重要なポイントでありますが、その根幹にあるのは資金力です。
その資金力の一つである借入れについて、3回に渡って触れたいと思います。
過去の慣習から無借金経営をする学校法人、借入れによるレバレッジを使う学校法人
と2パターンあるように見受けます。
2016年くらいまでは、この2つのパターンがほぼ半分ずつという統計でした。しかし、その後、少しずつ借入を増やす学校法人が増えてきております。
今までは、自己資金に余裕があれば借入をしなくても、設備投資などは自己資金を取り崩して済ませるという状況でした。高い借入金利を払わずとも、毎年の大幅な収支差額黒字を自己資金として積み上げ、更にそれらを定期預金や国債で増やすことで、必要な時とり崩して充当することができました。
しかし、今の低金利下では、「自己資金に余裕があれば借入をしない」という考え方では学校法人が立ち行かなくなるかもしれません。
その理由に学校運営の環境の変化があります。変化には例えば下記のものがあります。
1. 収支差額黒字を自己資金として積み上げ続けることが、一層、難しくなっている
2. 設備投資や赤字補填に自己資金を取り崩してしまうと、簡単には同額まで復元できない、じり貧 傾向をたどる可能性が高くなっている
3. 自己資金の減少は、学校経営の自由度を狭め、最終的には他人資本に大きく依存せざるを得なくなるリスク
4. 現在の借入金利は相対的に低い
もし、今、自己資金がある学校法人において、無借金経営を目指すのではなく、
◆上手に借入れを取り入れること
◆自己資金も適切に運用し、膨らませること
こういった借入金を利用した組織経営を行うことがトータルで見た学校法人の発展のために、良いと考えられる時代になったのかもしれません。
次回は、学校法人の融資の現状にも触れたいと思います。