2020.07.21
学校法人資産の運用を考える(12) 私学経営を発展させる② [私学経営をトータルで考える ~自己資金は温存、膨らませてゆくという選択肢(2)~]
学校法人の資産運用を考える粟津 久乃
私学経営において、前回、今後は借入金が重要なポイントになるという説明を致しました。
ここからは2回に渡り、実際の学校法人の借入の実態について触れながら、より効率的な学校経営の在り方を考えたいと思います。
直近はオリンピック需要などで、工事単価の上昇や納期の遅れから、設備投資を控える学校法人が増えており、昨年の借入金は全体で減少しております。
しかし、学校の魅力である新しい設備や、耐久年数の問題などため、校舎建設や設備投資は今後、また増加するでしょう。
では、いざ設備投資の計画を考える時に重要になるのは、借入だけ単体で考えるのではなく、学校法人の資産全体のバランスを取れるか、という点になります。
単純に低金利なので借入金に頼ればよいという訳ではありません。
借入は一つの手段であり、貸借対象上、負債を増やすことで新たな資産を生み出す力となります。
つまり、資産と負債に大きな影響を長期に渡り与えます。
それは学校法人の長期計画を大きく変えることになるでしょう。
そのため、まずは中期計画で資産と負債の両面のバランスを考えた上で、検討する必要があります。
では、現在の借り入れ状況を見ながら、学校法人にとっての借入の在り方についてみていきましょう。
◆金利の低下
私学事業団の融資は、学校法人にとって借入の一つの指標となると思います。
校舎や建物の建設費などへの融資金利は
30年固定で0.8%
20年固定で0.5%
と非常に低いものであります(2020年7月時点)。
以前はなかった30年固定金利は2年前より創設され、さらに借入金の支払いにゆとりのある状況となりました。
繰り上げ返済も可能であり(手数料必要)、まずは、ゆとりのある返済計画をと考えることもできます。また、支払いには据え置き期間(利息のみの支払い)があり、借入期間によって最高2年間の据え置き期間があります。
◆融資の上限額
学校法人にとって、いくら借りられるのか、というのは非常に気になる問題かと思います。
例えば私学事業団では
1.事業査定額・・・実施する事業から算出される金額
例えば建物建築の場合:(融資対象面積×建築単価―補助金)×融資率
2. 資産査定額
貸借対照表の純資産の部分合計(資産の部合計額―負債の部合計額)×30%
3. 担保査定額
担保物件の評価額×担保率(80%以内)
以上の①~③の最も低い金額が上限となります。
多くの学校法人は、①がその金額に該当することが多いようです。なお、私学事業団の場合、担保評価は土地のみを対象となり、土地の評価は基本的には路線価に基づきます。
なお、昨年より、私学事業団(融資額は80%まで)において、他の民間銀行より、20%借り入れ、事業の100%の借入が認められるようになりました。
このように、私学事業団と民間を組み合わせて100%の融資を行うこともできます。
では、次のコラムにて、更に借入を深堀しつつ、資産負債のバランスを取る必要について述べたいと思います。
私学経営を発展させる③へ続く。