2020.07.28
学校法人資産の運用を考える(12) 私学経営を発展させる③ [私学経営をトータルで考える ~自己資金は温存、膨らませてゆくという選択肢(3)~]
学校法人の資産運用を考える粟津 久乃
学校法人にも企業のコーポレートガバナンスのような「学校を統治する考え」が必要であると文科省は推進しており、現在、学校法人のガバナンスコード等が作成されています。
そもそもコーポレートガバナンスとは、不正を防ぎ、健全な経営を行い、企業価値を高めるためる仕組みです。
その中にはいくつかのポイントがありますが、今回のコラムと関係が深い部分は、
「財務体制の強化」という部分です。
企業の「財務体制の強化」とは、中長期的な成長戦略を立案し実行に移すためには、現在の経営体制に見合った融資・出資を適切に受け財務基盤を強固にし、また、その財務判断を重要視することにあります。
そういった観点から考えると、学校を持続的に成長させ、学校価値を高めるという目的において、中長期的な成長戦略をまず検討し、長期的な収支計画が見えた上で、その体制に見合った融資を受ける必要があります。
つまり、単純に低金利だから、借り入れをすれば良いのではなく、如何に長期計画で資産と負債のバランスを取れるかを検討することが大事になります。
さて、今回も引き続き、学校法人の借入について触れながら、バランスの良い私学運営の方法を考えたいと思います。
まず、借入の時に検討する際、借入割合の一番大きい私学事業団と民間銀行の差を見てましょう。
◆私学事業団と民間銀行との差
借入期間
一般的に、民間の貸出しでは20年までが多いようでして、私学事業団のような30年の固定は珍しいと考えられます。
返済方法
私学事業団は元金均等返済のみであり、民間は元金均等返済と元利均等返済が選択可能です。
○元金均等返済
メリット:総返済額は少なくなる
デメリット:最初の支払額が大きい
○元利均等返済
メリット:返済額が一定で支払い計画が立てやすい
デメリット:総支払額は多くなる
担保
担保もそれぞれの金融機関で異なります。私学事業団のように土地のみの担保評価であったり、銀行によっては預金担保でも受け入れる銀行もあります。
ただ、預金担保してしまうと、結局は運用できず、自己資金の活用には繋がらない点も考慮する必要があります。
連帯保証
連帯保証に関してもそれぞれの金融機関で異なると思います。
例えば私学事業団においては条件を満たせば免除されることも多いようです。
借換え
私学事業団の融資において、借換えは受け付けておりません。現状の借入金利が高い場合、民間で探す必要があります。
以上のようにポイントをいくつか、挙げさせて頂きました。
ここ数年、私学事業団の融資も変更点が多くなっており、民間銀行の学校法人への貸出への力の入れ方も変わってきおります。
これからの時代は、融資も多様であり、私学運営者にとって、最適な融資先、融資形態を選択することも重要となってきます。
前々回のコラムで述べた、自己資金の活用と合わせて考える必要があるので、益々バランスをとることが難しくなっております。
負債として20億円の設備投資を行うのを0.8%の固定金利で30年借り入れ、
自己資金を取り置いたとしても、自己資金を
現在の日本国債(10年0.042% 6月末時点)で保有しは利回り負けしてしまいます。
つまり、資産運用を安定的に長期計画できないのならば、安易に借入だけを起しては本末転倒になるのです。
借入形態を上手に選択し、資産運用で自己資金を膨らませる、この資産と負債のトータルのバランスを如何に取れるかがとても重要な時代となりました。